自惚れじゃないよ:utpr | ナノ
「ハル、手を。」
そう言って微笑む真斗君の顔を直視できず、俯いてそっと手を出した。彼の細くて長い指が、そっと私の手を取る。彼の指は、男の人だけれどとても線が綺麗だと思う。以前その事を真斗君に言ったら、“ハルの手の方が、美しい”と言われてしまった。もちろん私は赤面してしまい、真斗君に笑われてしまったのだが。


「どうした、先程から赤くなったり、落ち込んだり。」
「…真斗君は、ズルイです。」
「…?」
「わ、私ばっかり、ドキドキして。」

ちらっと彼の方を見ると、とても優しい瞳でこちらを見ていた。それが何だか恥ずかしくて、また俯いてしまう。

「そんな事は、ない。」
「…え?」


繋いでいた私の手を、彼は自分の胸に持っていく。彼の胸に触れた掌が、熱い。それと同時に伝わったのは、私と同じ位速い鼓動。

…何だ、私だけじゃなかったんだ。

「…俺だって、手を繋ぐだけでこんなに胸が痛くなる。」
「…はい。」
「ハルと同じだ。」
「は、い…。」



「お互い、少しずつ慣れていけばいい。」

そう言って繋ぎなおした手を、今度は私がそっと握った。
少しだけ頬が赤く見えたのは、夕日のせいだけじゃないですよね。