神様にもわからないこと01 | ナノ
「羊、くん。」

「ん?」

「よう、く、ん。」

「うん。」


熱に浮かされながら、僕を確かめる様に呼ぶ。互いの肌は、溶ける様に熱くて眩暈がする。これが夢ではないと、僕は手で、唇で彼女を辿る。その度に彼女の肌は、ほんのりと赤く染まり、体温が上がる。それを繰り返せば、僕の体温も彼女の体温も温度差なんて無くなって、混ざって一つになった錯覚を起こした。

「月子、つき、こ。目を開けて?ちゃんと僕だって確かめて。」

とめどなく溢れる涙で、彼女の瞳が揺れる。焦点だって合っているか分からない。そんな瞳ですら愛しくて、涙を掬うように舐めた。味覚はしょっぱいと感じるのに、脳は甘く痺れる。最早、彼女の体温、行動、声、全てが僕の欲望を促した。


「…あっ。」

彼女の両手が僕の背中に回り、彼女の身体が波にさらわれる。
まるで泳いでいる様に、沈んでいく様に、浮いたり沈んだりを繰り返して
一体僕らは、何処へ行くのだろう。

「…月子、好きだよ。」

そう言って口付けた瞬間。
遠くで彼女が僕の名前を呼んだのが、聞こえた。

僕は彼女の中に沈んで、溺れていくのを感じた。

何処に沈んでいくのかは、神様だって知らない。