祝福と別れのキスを(錫月) | ナノ
白い純白のドレスを着て微笑む君は、俺以外の男のもの。
もう二度とこの思いが実ることはない。長い初恋だった。幼い頃から彼女しか見てなかった。
幼馴染のポジションは、人肌に温めたミルクのように柔く、緩いものだった。
気づいた時には、もう遅かったのだ。
「ぁ、錫也!!…来てくれたんだね。」
「当たり前だろ、お前は大事な幼馴染だからな。」
「ふふ、嬉しい。哉太もさっき来てくれたの。」
あぁ、彼女はこんなにも綺麗に笑う女性だったのか。
そこにいたのは、もう俺の知っている彼女ではなかった。
「あのさ、俺…、月子のこと好きだったんだ。」
「え?」
「幼馴染じゃなく、一人の女の子として好きだったんだ。」
人肌に温めたミルクは、やっぱりちょっとぬるすぎて
温めためるには少し時間が遅すぎた。
「もう、お前は俺の知ってる月子じゃないんだな…。」
「錫也…。」
「今まで、好きでいさせてくれてありがとう。」
「っ、錫也ぁ。」
「ほら、泣くなって。まだ式は、始ってないぞ。」
「ごめんね、錫也、私、」
「いいよ、わかってる。こんなタイミングでごめんな。」
「…ううん。ありがとう、錫也。」
この恋に終わりを告げよう。次に進むために。
彼女のおでこに口づけを落とした。
「結婚おめでとう。幸せにな。」
(サヨナラ、俺の初恋。)
祝福と別れのキスを