乾きたての世界でお茶にしよう(W) | ナノ
“夜久は女の子だから、しょうがないよな”


きっと私に気を使って言ってくれたんだと思う。でも、“出来ないだろ”と見限られたような気になった。人よりも頑張らなきゃいけないのは、当然で、出来ない事があるのも事実。けれど、やる前から決めつけられるのは悔しい。


その場にいたくなくて、“じゃあ、お願いします”と言って逃げてきた。悔しいのに出来なかった自分に腹が立った。ふつふつと胸が熱くなって、視界が歪みそうになる。気がつけば、生徒会室の前にいた。まだ誰も来ていないのを良いことに、中へ入ってうずくまる。

「…っふ、…。」

泣くのは、ズルイ。特に人の前で泣くのは。だから1人にならないと泣かなかった。それは幼馴染も同じ。きっと生徒会室に来たのは、ここが落ち着く場所だから。
もういいや、泣いてしまおう。

涙を流すことは、ストレスの発散と同じだ。
ひとしきり泣くと気持ちがだいぶ落ち着いた。…うん、もう大丈夫。
手鏡を出して顔を見ると、目は真っ赤だし、腫れているしで酷いものだ。

(…皆が来る前に、顔を洗って来よう。)

ガラッと開く音がして、思わず振り向く。
そこには颯斗君が立っていて、目が合ってしまった。思わず逸らしてしまう。

「…月子さん、早いですね。」
「え?…」
「月子さんを見習って、会長と翼君にも早く来てもらいたいものです。」
「…。」



「せっかくですから、2人でお茶にしませんか?」

食堂のおばさんからいい茶葉を貰った、とお茶を入れ始めた。しばらくすると、紅茶の良い香りがした。

「はい、どうぞ。」
「…ありがとう、颯斗君。」
「ふふ、どういたしまして。」




「あー、そらそらと書記だけズルイぞー!!」
「…せっかく静かなひと時が。」
「ふふふ、翼君にもお願い。」
「貴方が言うなら、しょうがないですね。」