さぁ、最後の晩餐を07 | ナノ
月子が俺の作った料理を食べる。ほんのり赤い口を開けて、パクっと食べる。頬を緩めて、幸せそうな顔をする。そこまで見て、ようやく俺は安心して料理に手を付けるのだ。

月子は知らない。俺の作る料理には毒が入っている。

毎日毎日少しずつ入れてきた。
少しなら何の効果もない。摂取し続ける事で、蓄積していく。
そんな事も露知らず、いつも幸せそうに食べる。もう彼女の身体には毒が蔓延しているというのに。


「本当に、錫也の料理はおいしい。」
「はは、ありがとう。喜んでもらえて俺も嬉しいよ。」
「最近は錫也の料理が美味し過ぎて、他の人のじゃ物足りないんだよね。」




ほら、毒が回ってる。

「…それは、俺の愛情が入ってますから。」
「ふふ、そうだね。いっぱい詰まってるもんね。」
「そういうこと。」

食べ終わった食器を、二人で片付ける。この瞬間も徐々に彼女に毒が回っているのだろう。

「でも、このままじゃ錫也以外の人が作った料理食べられなくなっちゃう。」
「…。」
「錫也、何か言った?」
「いや?ほら、手動かして。」



“他の人のなんて食べなくて良いよ”
俺の愛情は、毒だ。月子の食べるものは、俺が作ったものだけになるように。
そうしたら、月子は俺なしじゃ生きられなくなるだろ?
別に身体に有害なものじゃない。…心には有害かもしれないけれど。
月子は、歪んでると思うかな。
毎日愛情という名の毒を入れ、君に食べさせる。
もうそろそろ、中毒になってきただろう?

さぁ、最後の晩餐を