指輪を落とした少女の雨宿り07 | ナノ
「…もう駄目かもしれない。」
そう目を伏せて言った月子の顔からは、もうあの時の幸せそうな表情はなくて
ただただすれ違いと不安と、会えない羊の事を思い歪んでいた。

2人が最後に会ってから、もう3年が過ぎていた。

“…羊君に会いたい。淋しい。”
と言っていた月子が、
「もう、疲れちゃった。もう待つの、つ、らい。ただ傍にいて、笑ってくれるだけでも良いのに、それさえも駄目なんだね。…分かってたけど、分かってなかった。」


「…月子は、もう羊の事嫌い?」
「そんなことない!そんな、こと…。」
顔をあげた月子の目は、泣き過ぎで腫れていて、なお涙が溜まっていた。このままじゃ月子が壊れると思った。…いや、こんな月子を見ていたら、俺が壊れると思った。

「俺じゃ、駄目なのか?」

腕を引いて、月子の顔を方にうずめた。

「…泣いていいよ。今だけ羊の代わりにして。」
「っ、すず、やぁ…。」


「羊が、好きなままでも、良いからっ…。」

肩が月子の涙でぬれて、背中に手が回された。
それが合図かのように、俺は苦しい位に月子を抱きしめた。

宿