ぼやけた世界に魔法の言葉05 | ナノ
“大丈夫、夜久さんなら”

“よしよし。良く頑張りました。”

部長にそう言われると、安心する。それと同時に、大きな手が私の頭を撫でてくれれば、もう無敵。何でもできる、そんな気になる。

「私、部長にそう言ってもらうと、元気が出るんです。」
「そう?じゃあ、お互い様だね。」
「お互い様…ですか?」
「うん。僕も夜久さんに、励ましてもらってるから。」

「君は気づいてないかもしれないけれど、君の笑顔で頑張ってる姿に、僕は凄く励まされるんだよ。」

「…そんな。」
「ふふ、照れないでよ。だから、お互い様だね。」

ぽん、と私の頭に手を置いて微笑む。
「僕は君が一生懸命努力してきた事を知ってる。だから大丈夫。出来るようになよ。」
おまじない、といつものように頭を撫でてくれる。ちょっと泣きそうになるのを、必死で堪えた。

…うん。きっと大丈夫。部長が言ってくれたから。

「でも。無理はしない事!辛くなったら、すぐ僕に言うんだよ。いい?」
「はい、わかりました!」
「よし、良い子。」


その次の日、私の矢は的に命中するようになった。
ちらっと部長を見たら、“ね、言ったでしょ?”と微笑んでいた。



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