月の泪で転んだ少年06 | ナノ
君に意地悪をして、からかうことは僕のライフワークのようなものだ。一日一回は彼女のいじけた顔を見ないと何だか物足りない。
それを君も理解してくれていると思ってた。何だかんだ言っても、僕は君の事が好きだって。
「…さぁ?どうだろうね。君の想像に任せるよ。」
「…。」
そのいじけた顔。それは僕にしかさせられない顔。
僕の一言で、一喜一憂する君の表情が堪らない。子供っぽいけれど、これが僕の愛情表現の一つだ。
「まぁ、君が」
「もういい。」
「…え?」
下がりそうになる眉を必死につり上げ、目に涙を溜めて彼女は僕を睨んだ。
(あ、やり過ぎた)
思った時には、既に遅い。
「もういい、郁なんか知らない!」
「ちょ、ちょっと月子。」
おもむろに立ち上がり、上着とカバンを持って足早に玄関へと行ってしまった。
「もう帰る。」
「ちょっと待ちなって!」
僕の目を睨んだ彼女の目から涙が零れた。彼女を止めようとした僕の手が宙をかき、玄関が音を立てて閉じた。
「…まずい。本気で怒らせた。」
月の泪で転んだ少年
「やっと見つけた…。
僕が悪かった、ごめん。帰ろう月子。」
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