ガラス片が刺さる痛み07 | ナノ
だから、無理をするなって言ったんだ。
過労で倒れたなんて、保健室で眠る月子を見るまで、生きた心地がしなかった。呼吸をして上下する身体を見て、やっと自分の体温が元に戻った。

「本当、お前心臓に悪いよ…。」
ため息をついて、ベット横のパイプ椅子に腰を降ろした。星月先生は“お前が来たなら安心だろう”と出て行ったしまった。哉太も先に寮に帰ってしまった。

保健室は、良く風が通る。
カーテンを揺らし、月子の前髪をそっと撫でた。その様子を見て、手首から手のひらにかけて包帯が巻かれているのに気付く。転んだときに、捻ったのか。白い手首に、その包帯は痛々しかった。

「馬鹿、怪我するまで無茶するなよ。」

不甲斐無い自分に腹が立つ。どうして倒れる前に気付いてやれなかったのか。

そっと手をとり、包帯越しに口づける。薬品のにおいがやけに、きつく感じた。
そのまま両手で月子の手をしっかりと、握る。
俺よりも温かくて小さな、細い手。力を入れたら、きっと折れてしまう。そのくせ本人は、芯が強くて頑固者。(そんな所も好きだけど、逆に怖い。)

「お願いだから、俺の見てない所で、無茶しないでくれ。」

お前が傷つくと、俺も痛いんだ。自分の傷より、ずっと。