飲み込む残照
始まらない恋をしましたあなたには告げることなどできない恋を
気がつけば君の呟く本ばかり買うものリストに詰め込んでいる
「おやすみ」とただそれだけを言いたくてついと滑らせ止める指先
教科書を胸に抱えて深呼吸 問二が分からないふりをする
嬉しくてでも切なくて手で隠す初の「たいへんよくできました」
紺色のセーラー服の横に立つ黒ランドセル(嬉しくないな、)
ああこれをねじれの位置と言うのだろう君と僕との視線のことを
君に会うこの夢だけはコスモスが揺らめきながら色づいている
あまりにも鮮明すぎて現実が深夜の雨へ溶け落ちていく
築年数50を超えるアパートで音もなく降る時のぬくもり
透明度5パーセントの恋をして触れられるのか確認できず
夕焼けに輪郭の溶ける君を見て泣きそうになり飲み込む残照
綿津見(unclear_09)
2014/09/30
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