撰ぶ道



―――…






貴方には、自分の信じる道を進んで欲しいから――















「一、さん…っ――」

「名前――…」





周囲を戦火に囲まれた状況の中でさえ、静かな夜は訪れるものでした。

初めて触れる貴方の肌、初めて感じる温もりと淡い痛みは酷く心地良く、向けられる貴方の熱い眼差しに体の芯から焙られている、そんなような錯覚を覚えます。

まだ京にいられた頃――局長と、副長と、他の幹部の人たちと皆で共に過ごす事が出来ていた頃に、貴方と約束したことを





"いつか、…一緒に"




一日たりとも、忘れたことなどありません。

誠実な貴方と今の今まで一度も交えたことのない熱を重ねながら、その真っ直ぐな瞳を私は見上げていました。




「許せ、名前――」




何もかもが変わってしまったこの幾月―― 沢山の大切な人を亡くし、沢山の想い出も、沢山の望みも、赤い炎の中に無数に散って…





「許してくれ、…名前――…」





貴方が今何を考えているのか、十分過ぎるくらいに理解しているつもりです。いつもなら迷いのない瞳が切なく揺れているのも、こうして腕に抱いて下さったのも…

貴方が今まで信じてきた、誠―― その名の下に命を散らせようとしているからなのだと…そして、




「…、私はずっと、貴方だけを待っています――」




そうすれば二度と、こうすることは叶わないから…。

真っ直ぐで誠実で、自分の信じる道を只管に歩んできた貴方――





「…すまない…――」





貴方が進んで行く先に例え私がいなかったとしても、それが貴方の答えであるのなら私もそれに従います。もう二度と会うことが叶わなくなるかもしれないのだとしても、それが貴方の望む生き方であるのなら…

もう一度、私へ償いの言葉を口にしようとした貴方の唇を私が塞いだ時には、既に山向こうに朝の陽の光が見え始めていました。





「私は、そんな貴方を、愛したのですから――」





一際強く抱き寄せられ、"愛している"という一言。それだけで、私は十分でした。





別れの朝は、ひどく晴れ渡り、とても鮮やかで…





貴方の生きる道に従うと言った私ですが、この朝を、夢であって欲しいとそう思うことを――









今だけはどうか、許して下さいね――













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[薄桜鬼]
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