「ケーキ!」

目をキラキラさせながら笑みを浮かべる20代後半のこの男を可愛いと思ってしまった私はもはや末期だろうか。

「食っていいの」
「ええ、いいですよ」

可愛らしく飾り付けられたこのケーキは昨日お店で洋菓子店を営む主人に頂いたものだ。しかしタイミングが悪い事にその頃新ちゃんは親衛隊の遠征、神楽ちゃんはお父上と宇宙旅行に出掛けてしまっていたので、ワンホールはとても1人では食べきれないと彼を呼んだ次第である。

…このケーキを受け取った時に何故か真っ先にこの侍の顔が浮かんだ、とは死んでも言ってやらないけども。

いつの間に持ってきた包丁で器用に切り分けていく姿を見て、本当にこの人は甘い物と一緒に生活してきたのね、なんて4つに切り分けられたケーキをぼんやりと見つめ思った。

「優しいのね、あなた」
「なんで」
「新ちゃんも神楽ちゃんも1週間くらい帰って来ないのに」

切り分けてあるから、と告げればケーキを小皿に取り分ける彼の手がぴたりと止まり、静止したまま動かなくなった。

「銀さん…?」


まさか、
無意識だったなんて。

あれ、そうだっけと平然を装うつもりでせかせかと動きを再開させるがぎこちない。みるみる赤くなっていく頬にこちらまで恥ずかしくなってしまう。

「…たまたまだよ」

私の目線に耐えきれずにぶっきらぼうに答える。仕方のない人、恥ずかしい事なんてないのに。

やっと念願のケーキを口に運んだ彼は、ここで素直に「美味い」と言って目を細めた。

「あいつら、言うかな」




僕と私の分も!

2012年2月14日

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