「死ぬ時はどんな風なんだろう」

焚き火を囲い暖をとる中で、仲間の一人がそう呟いた。冗談とも取れないような戯れ言に皆聞き流すだろうと思っていたが、意外にもあちこちでそれについて談義し始めた。くだらない、それよりも疲れたから早く寝たいと瞼を閉じれば、お前はどう思うんだと唐突に話を振られ、何故だか皆一斉に俺を見るもんだから、その場しのぎのつもりで「俺が死ぬ時にでも実況してやらァ」と答えた。結局そこに居た奴らは戦の最中、天人が放った弾丸に胸やら頭やら貫かれて呆気なく死んでいったんだ、俺よりも先に。



随分と懐かしい夢を見ていた。はっと瞼を開いたはずなのに目の前は闇が広がっている。ドクドクと身体の外へ流れる血を止血する事はおろか疲れきった身体を起き上がらせる事も面倒だ。しばらく呆けた状態でいれば段々と状況に慣れてきた瞳は辺り一面の星を映し出す。指を少し動かせば水の音がする。服が身体に張り付いている感覚からすればここは川の浅瀬かそれかどこか泥水の中か。

今は初夏のはずだが、酷く寒いと身体が震える。まるでゆっくりと沼にでも沈み込むかのような脱力感が身体中を襲うが、不思議に違和感も無くただ妙に安らいだ気持ちにさせた。

俺は、死ぬのだ。

「悪ィ、実況出来ねェや、けど」

結局お前らどんな風だか知ってんだろ、と夜空に向かって笑ったのを最後に意識が途絶えた。



『死ぬ時はどんな風なんだろう』

例えば、こんな感じ。




命の終わり

2012年2月7日

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