ああ、まただ。

妙が目を覚ましたのは明け方に近い時間だった。背中に人肌を感じて身体を反転させれば、寝ているだけなのにいつもと違う雰囲気を出し不気味な静けさを出す銀時の姿があった。銀髪を避(よ)けて額に触れば眉をしかめ妙の身体に回された腕にぎゅうっと力が入る。少しだけ熱い。この予兆に起きていられて良かったと妙は息を吐いた。きっともうじき彼は苦しみだすだろう。

はあはあと荒い息を吐き顔を歪ませ低く唸り続け汗はぽたりと布団に落ちる程流る。何か言いたげに口をはくはくと動かしている。ああ、心がぐにゃりと音を立てて潰れそうだ。平然を装い苦しむ銀時の負担を減らそうと背を擦るが妙の脳裏にはもしこの人がこのまま目を覚ます事なく冷たくなってしまったらと不吉な事ばかり過ってしまう。怖い、怖い怖い怖い。冷静に彼の名前を呼び続ける声が次第に震え始め、とにかく目を覚ましてほしくて自分の存在が分かるよう痛い程に銀時を強く強く抱き締めた。

嫌よ、嫌、銀さん、銀さん

掠れた叫びを繰り返せば、大きな身体がびくりと震えた。



貴方は怖がりの癖に助けてくれと言わないから、もし私が深い深い眠りについたまま貴方のその苦しみに気付かずにいたら、夢から醒めるよう私を激しく揺さぶって名前を呼んで。

赤色の目から無意識に流れる涙を拭った後、彼の頬に触れる。今にも泣き出しそうな妙を見つめて銀時はごめんなと何回も続けた後で「ありがとう」と優しく笑った。




縋って

2012年2月8日

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