ひゅん、と風を切った刀は勢いを付けて首を落とす。乾いた地面に響く水音の方へ視線をやれば先程跳ねた首が血走った眼球をギョロギョロと迷わせ、ようやくこちらに焦点を合わせ凝視しながら休まず口を動かして息絶えた。

「首を跳ねるのがお気に入りたァ夜叉とはよく言ったもんだ」

聞き慣れた声の主が死体の山を確かめるように掻き分けこちらへ近付いてくるのを確認してげんなりと項垂れる。

「…楽なんだよ、つか傍観してんじゃねェよ趣味悪ィ」

人がまさに生死を分けた闘いを繰り広げている中で腕組んでニヤニヤ笑いやがって邪魔だとブツブツ文句を垂らせば高杉はクツクツと喉を鳴らし、このまま腐り落ちるであろう息絶えた首を踏みつけ「楽、ねぇ」と一言、辺りを見渡した。

「なァ知ってるか?俺達人間は首を跳ねればコイツらのように呆気なく御陀仏だが、そこら辺に居る小せぇ虫なんかは頭もがれても餓死するまで生き延びるらしいぜ」

「…順応性が高いようで」

「もしコイツらが首が無くとも餓死するまで生き延びる事が出来りゃ何を望むだろうなァ」

素直に呪われるから気を付けろと言えねェのかと睨めば高杉はおお怖い怖いと笑うだけだった。先程まで傍観していたのなら見ただろう、斬り落とした首はどれも最期は俺の目を見ながら シロヤシャ と口を動かしやがる。

それでも良い、何を言われようが恨まれようが首さえ落としさえすれば天人も人間も数秒でただの肉の塊になる事を俺は知っている。楽だのなんだの言うが結局俺はただの臆病者なのだ。






2012年2月10日

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