例えて言うなら?
「なまえって猫っぽいよな」
「ん?」
「いや、なまえを動物に例えて言うなら、猫かなーって」
「どったのいきなり」
「ふと思っただけ」
と言う会話を金曜日の部活の途中に新開としていた。次の日の土曜日、珍しく部活が休みだったので、いつもより遅く起床した。
そして事件はここからである
顔を洗うためにやってきた洗面所。鏡にはいつもの残念な自分の顔と猫耳
「…ねこ…猫耳!?」
しかもご丁寧に尻尾までついている。いやついているという表現はおかしい、生えている。
「これは夢だこれは夢だこれは夢だ」
「何してる愚妹よ」
「兄さん!見てこれ!」
「ファ!?猫耳に尻尾…だと?くっ我が妹ながら兄ちゃんのツボをついてくるとはやりおる、猫耳、尻尾ときたらあとはメイド服があればパーフェクトッ!そしてお兄ちゃん、おかえりにゃさいと言ってくれるだけでおにいちゃんはもう!昇天する!」
「ごめん、ちよっと黙ってて」
「とりあえず写メ!」
そう言って、携帯をこちらに向けありとあらゆる角度から私を撮りまくる兄さん。私パジャマなんだが、ズボン短かくて下アングルはパンツ見えるからやめろよ
「むっふー!兄ちゃん満足!」
「てか兄ちゃんどっかでかけるの?お母さん達は?」
「おうよ!拓哉んちでゲーム大会する!母さんと父さんは仕事、んで仕事が終わったらデートしてくるってー」
「じゃあ今日は帰って来ないだろうね」
「そうだな、おっ送信完了」
「何が?」
「何でもなーい!んじゃ!行ってくるぜー!」
アホ面の兄を玄関まで見送り、私は自分の身支度を済ませる。今日は特に遊ぶ約束もしてないし、てか、こんな状態で外出れんわ
尻尾が邪魔で洋服が着にくかった。とりあえずこの間新しく買ったワンピースを着たけど、もぞもぞする
ふと思い出したベッドの上に転がっている携帯をみると、ランプがチカチカと点滅していた
「新着メール30件?怖っ!」
しかもほとんど東堂だし、あとは寿一とか新開とか、おっ珍しい荒北まで
メールを開こうとしたとき、ピーンポーンと玄関のチャイムがなった。誰?こんな格好だけど、とりあえず覗き穴から覗いてみよう
「なまえー!いるのはわかってるんだ!早く出てきてくれ!」
………よし、居留守を使おう
「なまえチャァン、出てて来ないと玄関が吹っ飛んじゃうかもヨ」
「なまえー入れてくれーお菓子たくさん持ってきたぞ!」
「3秒待たれよ」
私は急いでタオルをかぶり、ワンピースの中に尻尾を直す。別にお菓子に釣られた訳じゃないんだからね!とか無駄にツンを出してみた
「お菓子だけ置いてさっさと帰れ」
「なまえ!最初にそれか!」
「今日家誰もいねェンだろ?」
「お邪魔しまーす」
「お、お邪魔します」
遠慮もなくズカズカと入ってくるのは、東堂荒北新開の3バカと何故か黒田くん。珍しいな
「で?急に何しに来たの?」
「それより何でタオル被ってるの?なまえチャン」
バレテーラ、これアレだろ。兄ちゃんだろ。送信完了ってそう言うことかよ、くたばれ
「兄ちゃんからメール来たの?」
「俺と寿一にメールが来たんだ。んで寿一は用事があるらしいから、こいつら誘って来てみたんだよ。黒田も偶々荒北のとこいたから誘ってみた」
「という訳だ!さぁ、なまえ!タオルを取れ!」
「どうせ写メとか見てるよね、しゃーないな」
なまえはタオルを取って、ピンッと耳を立たせ尻尾をだらーんと垂らす
おおお!と4人から歓声が起こる。まったく見せ物じゃないんだよ
「猫!耳!尻尾!」
「なまえチャン、触ってもいーい?」
「なまえ俺も!」
「先輩…!」
耳をわさわさと触ってくる4人。少しくすぐったい。てかむさ苦しいな
「尻尾はどうなってるんだ?」
「ッ!」
新開に尻尾を掴まれ、床に座っていたなまえは、ソファーに座っていた黒田の膝にへにゃっと倒れたこんだ。黒田は真っ赤である
「尻尾…掴むな!」
「何だ力が入らなくなるだけか」
「尻尾を掴まれて力が入らなくなるとは、どこぞの戦闘民族のようだな」
わっはっはっと笑う東堂。私もそれ思ったわ
「てかさ、新開が昨日あんなこと言ったからこうなったのでは?」
「いや、俺は例えて言うならってちゃんと言った」
「現実になっちゃったんですけど?」
すぐ戻るさ、と気楽な新開。私は黒田くんに寄っ掛かったままで、隣にいる新開にパンチする。そうすれば猫パンチだネと荒北に笑われた
そしてこのあとめちゃくちゃ遊ばれた
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