D.gray-man Novel | ナノ



D-gray.man


教団の外は雨模様。
当分の間、雨は止んでないと思う。
私がここにいる間は、ね。




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「…任務ですか」

今日は6月5日の夜10時。
彼の誕生日まで、後2時間。

「そうなんだ。急を要してね」
「…ユウには秘密にしといて下さいね」
「解った」

「じゃ、行ってきます」

司令室から出て、急いで汽車に乗ろうとする。
しかし、汽車はもう汽笛を上げ、走り出している。

ななこは飛び降りて、汽車に乗れた。


「ホント急って言ってたけど…
 私、この乗り方嫌いなんだよねー…」

ユウがいないから。
ユウと一緒じゃないから。

ちょっと不安になるのだった。







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オレが起きた時にはみんな余所余所しかった。

オレがななこはどこだ?と聞いても、
「え、ななこ?さ、さあ」
「あー忙し忙し」
「ななこちゃんなんて知りませんっ!」

最後の馬鹿コムイに至っては、まだ何も言ってないのにあんなこと言いやがった…

てめぇら、絶対なんかあるだろ。
なんか隠してるだろ。
そう思うが、別に気に留めることなく。

…でもななこがオレに無断で任務に行くことなんてないのにな。

そう思うと少し切なくなる神田でした。







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「きゃああああああ!!!!!!!」

悲鳴が耳を貫く。
AKUMAが人を襲っているのだ。

「イノセンス…発動」

ななこはイノセンスを持ち、跳んだ。
そして、AKUMAを破壊する。

少ない数だった為、すぐに全部を破壊することができた。

「何よ急って全然余裕じゃないのよ私の愛しのユウとの時間を返しなさいよコムイふざけんじゃないわよアレンとかアレンとかアレンとかいたはずでしょうが全く人選をミスってるわというかコムイを室長にした時点で人選ミスをしているといことに気付かないのかしらヴァチカンも適当な所があるのねそんなところに身を委ねてるってホント情けないわ〜」

ななこの無限独り言。
こうなるとななこは止まらない。

ブツブツ言っている中、ゴーレムがななこの前で羽ばたく。
何か通信があるのだろうと思い、近くの電話に直行する。

「? 誰?」
『(ジジッ)オレだ』

――気のせいだと信じたい。

「オレオレ詐欺ですか。私は騙されませんよ」
『誰がオレオレ詐欺だっ!
 ゴーレムなんだから、教団内の人間としか考えられないだろっ!!』
「解ってるわよっ!」

――嗚呼、ユウだ…

聞きたかったこの声。
今すぐにでも逢いたい。

「…待ってて」

思いっきり受話器を下げた。




『ガチャァン!』
「っ!」

思わず神田は顔を顰める。

「…何なんだ、ななこまで」

そして、神田はゆっくりと受話器を置く。

「あれ、どうしたんですか神田。
 もしかしてななこに振られたんですか、じゃあ僕がもらいます」
「ふざけるな、クソモヤシ。振られてねぇよ」
「ふっそれはどうでしょうかね」

アレンは大きな段ボールを抱えていた。

「何だその荷物」
「話変えるってことは振られたんですか」
「違ぇって言ってるだろ」
「食糧ですよ。一応溜めこんでおかないと…」
「ハッ」
「鼻で笑いましたね。食べ物の恨みは怖いですよ」

神田はその言葉をスルーして、自分の部屋に向かおうとした。

「そういえば、神田。リナリーが呼んでましたよ」
「…………」
「そんなに嫌そうな顔しないでください。リナリーなら食堂にいると思いますから」

軽く舌打ちをして神田は食堂に向かう。


「…何で僕がバ神田の為のパーティーの準備をしないといけないんですか」

アレンは小さく呟いた。





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「あ、神田。こっちこっち!」

リナリーが神田を呼ぶ。

「何だ、リナリー」
「早く来て!」

リナリーは食堂の中に入る。
神田も続けて入る。


「「「「おめでとう神田(君)!!!!!」」」」

「は?」
「何言ってんのよ、神田!今日はあんたの誕生日でしょ!」
「まさか忘れていたであるか!?」

――…そのまさかなんだけどな。

神田は本当に忘れていた。
今日が6月6日だということを。

「さあ、乾杯しよう!!!」


がしゃぁぁぁああん!!!!!

急に聞こえた破裂音。
グラスの音ではない。
壁が壊れて、何か出てくる。

「まさか…AKUMA!!?」

「あ、AKUMAとは失礼な…!」

「その声は…ななこ!!!?」
「ただいま〜
 そして、ユウ誕生日おめでとう!」

ななこは黄色い花を持っていた。
しっかりと握っていた所為か、少しそれは萎れていた。

「あ、これ。誕生日プレゼント …萎れちゃったけど…
 他のいいのが思いつかなくて…」
「…ありがとな」

「黄菖蒲であるか?このへんでは見られない花であるな」
「そうなの?クロウリー」
「凄いわねぇななこ」

クロウリー、リナリー、ミランダ、コムイ、科学班… ななこは色々な人に囲まれていく。

神田はそんな姿をちらりと見て、食堂を去った。




キ シ ョ ウ ブ
黄菖蒲
(花言葉は 信じる者の幸福)
(私はユウを信じてる)





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