05:さようならも言えないで手を離しちゃったね


「名前ちゃん、羅武ん所の副隊長やろ?羅武とは入隊当時から世話になっとってなァ…って、ちょ!どこ行くねん!」

"軽薄"

最初の印象は決して良いものではなかった

「副隊長就任当初からそないな顔してたらあかん、隊の顔なんやから」

そのくせして、知らない間に心の奥深くまで入ってきて

「ほんま無茶しよるわァ、心臓止まるか思ったで、」

いつも、困ってる時は助けに来てくれる

「なァ、好きやで」

いつの間にか私の心の中に入ってきて踏み荒らすくせして

「心配しなや、大丈夫やさかい、」

中々私には心の奥底を見せてくれない

101年前だってそうだ、魂魄消失事件の調査しに行って大怪我して帰ってきた時だって、

「ねぇ、真子、そんな顔しないでよ、」

生きてるんだからさ、と言って笑っても真子の顔が緩むことはなかった

「アホぉ、」

何を無茶しとんねん、という真子の顔は怪我をしたはずの私よりも苦しそうで、

「ねぇ、真子、あのね、」

警鐘がなってその続きは言えなかった、

「名前は何も心配せんでええわ、」













期間限定で、現世に行ってくれないかと総隊長に頼まれる
正直行きたくはないが、思った以上の敵方の強さの報告から、真生は卯ノ花隊長に預け、現世に赴いた

「悩んでるね、一護くん」

「名前さん、」

「死神の先輩として、1つアドバイス」

この間、死神になったばかりの彼のおかげで護廷十三隊は救われた

「自分の無力ほど苦しいことはないよ、」

あたしは救えなかったから、と嘲笑する

「真生くんの父親のこと、ずっと、後悔してるのか?」

「彼は真生がお腹にいたことすら知らないんじゃないかな?」

「生きてるかもしれねぇんだろ?」

「生きてたとしても許してくれるかは分からないよ、当時の護廷十三隊は彼らを見捨てたんだから」

もはや彼の心が私にあるとは限らないでしょ?って言えば困ったような顔をする

「真子ってね、男やからこの名前とか女やからこの名前とかそないな考えは古いねん、ってね言ってたのよ」

当時の護廷十三隊じゃ考えられないのよ、今じゃ男の子と女の子どちらも使える名前ってそんなに珍しくないけどね、と笑う

「やっぱり伝えとけば良かったなぁ、行く時に伝えられなかったの」

「俺、探そうか?真生くんの父親、」

「そうね、私が現世に来るのは多分これで最後だろうしね、」

吐き出された言葉が余りにも情けなかった
今までずっと照れて、彼に面と向かって直接言えなかった言葉がこんなに容易く出るだなんて、
なんでこんな簡単なことばが言えなかったのだろう、

「一護くん、」

「ん?」

「悩んでるならいってらっゃい、貴方は強いから大丈夫よ、」

少しだけ彼の表情が明るくなった気がした
彼への伝言を伝えたところで困ってしまうのは分かる
だけどね、これが本当に最後のわがままだから、

本当に、これが最後のわがままだからね、

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