04:泣かないよ、昔君と見た綺麗な空だったから


お腹が空いてるのに気持ち悪くて何も食べられない
もしかしたら、このまま死ぬのかな?
もう、いいや、いっそ死んでしまおう
貴方のいない世界なんて、生きてる価値がないから








「随分と無茶をしてきたようですね」

目が覚めたら四番隊の救護室にいた
護廷十三隊七番隊副隊長の辞表を書いて1ヶ月の身の上でこの場にいるのは大変気まずい

「……なんで?」

「勝手に辞表を提出してどうするつもりです?受理されるとでも?ただでさえ護廷十三隊が混乱してる中、貴方がしっかりしなければいけないのにそこまで頭がおかしくなりましたか」

「副隊長の1人が今さらもう1人いなくなった所で痛くも痒くもないくせに、」

卯ノ花隊長の眉が少し動くのが分かる

「いっそ、殺してよ」

「貴方一人が勝手に野垂れ死ぬのは構いませんが、お腹にいる子供も殺すのは私としては許可出来ませんので」

「……は?」

「平子真子との子供なのでしょう?」

「言ってる意味が、」

「妊娠2ヶ月、切迫流産です」

話に着いていけない

「貴方の自由奔放な無茶のせいで本来なら流産してもおかしくないのですが、流石は貴方と平子真子との子供、地上に産まれるために必死で今、生きようてしてるのです」

「そんな、罪人の子供なんて、1人で育てられる訳、」

「貴方が誰よりも平子真子がそのようなことをする人物ではないと分かっているでしょう?それに貴方は1人ではありませんよ、」

卯ノ花隊長がお腹を優しく撫でる

「平子真子との子供がいるじゃないですか、」

その時、初めて私は真子がいなくなったと自覚し声をあげて泣いた








「ねぇ、隊長?」

一度勝手に離隊したくせして戻れたのは本当にこの強い女性のお陰だろう
これ程の痛みを経験したのは初めてだ

「なんです名前、」

「私、1人で育てられるかな?」

「何を情けないことを、」

卯ノ花隊長が呆れたように溜息をする

「貴方には四番隊がいるでしょう?」

それに、七番隊士の子たちが既に出産祝いと言って大量のベビーグッズを四番隊舎に送り付けてるのですから寝惚けた事は言わないように、と腰をさすられる

「ねぇ、隊長?」

「なんです、名前、」

「真子に会いたい、」

「そうですねぇ、」

会いたいですね、と優しく笑いかけてくれる
いつの間にか涙が溢れてたらしく、山田副隊長が柄にもなく涙を拭いてくれるから更に涙が溢れ出した

痛みで思わず顔が歪む、

「おめでとう、元気な男の子ですよ、」

精一杯声を振り絞って泣く我が子を見る

「目、」

不思議そうに卯ノ花隊長と山田副隊長が私を見る

「目がね、真子の目だ」

まだ開けられてない瞳だが、形だけで分かった

「会いたいよ、真子」

これで会いたいというのは最後にしようって我が子に誓った








「卯ノ花隊長、」

「まだ帰ってなかったのですか?名前」

「中々四番隊に来れないので、」

「思った以上に元気そうで安心しました、」

「あぁ、真生ですか?人見知りせずに五番隊に溶け込んでますよ」

「いえ、貴方がですよ」

「え、あたし?」

「どんな困難にぶつかったとしても真っ直ぐ生きて欲しいから"真生"」

卯ノ花隊長がニッコリとほほ笑みかける

「強くなりましたね、名前」

いつも怒られてばかりだから、急に褒められると照れ臭い

「明日は貴方は心配せずに待ってなさい、」

「もとより心配してませんよ、」

卯ノ花隊長が負けて帰ってくるなんて想像出来ない

「無事のご帰還お待ちしております」

この言葉をもう一度吐く日が来るだなんて、と思う複雑な気持ち

「大丈夫ですよ、私を信じなさい」

その度に私は、何度もこの言葉で救われたんだ

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