02:何度生まれ変わってもあなたを見つけるから
「苗字三席、」
「あら、吉良くんと阿散井くん」
会釈をしてくる様は随分と厳かだ
「別に気を使わなくていいわよ、副隊長をやってたのも過去の話だし」
「びっくりしたッスよ、名前姉さんが七番隊副隊長だったなんて」
「あたしも今になってまた副隊長代行の話が来るなんてびっくりした」
ねぇ、ママねまた副隊長やることになったんだよ?と愛息子に話しかけてみたが難しかったみたいで首を傾げられた
「真生くんの父親がかつての藍染の隊長だったとお聞きしました」
「多分気付いてたんだろうね、頭が良い人だったから」
「もしかして、藍染が真生くんの父親を」
「おい、吉良!」
「あたしは大丈夫よ、」
ゆっくりと自分に言い聞かせるように話す
「真生がいてくれたから、この子がいれば大丈夫だから」
真生はよく話の内容を理解してないのだろう、ただギュッと私の手を強く握った
「雛森副隊長の治療は身体的にはもう大丈夫よ、あとは少しずつ心のリハビリをしたいのだけれども、」
あまりにも五番隊で過ごすのは辛すぎるだろう、という言葉は言わなくても雛森副隊長の同期である2人は分かりすぎてるのであろう
「雛森副隊長、こちらの書類を」
「……」
心ここに在らずだ、憧れで五番隊に入隊して副隊長になるまで頑張ったのだから無理はないだろう
「雛森副隊長?」
「あ、すみません……」
申し訳なさそうに目を伏せる彼女を見る、少し痩せたみたいだ
「雛森副隊長、これからお昼でもどうです?ピークの時間も過ぎましたしオススメの穴場のお店があるんですよ」
「とても美味しい和食の店ですね!」
こんな穴場があるだなんて知りませんでした、とやつれた顔で笑う彼女を見る
「あたしもこの店は人の紹介で知ったのよ」
「けど名前さんって新しい店が出来ると必ずチェックされてますよね、」
「いつ死ぬか分からへん身の上なんやからせっかくの人生楽しまなあかん、」
私が、七番隊副隊長になった頃に貰った言葉、
「真生の父親が言ってた言葉よ、」
思わず真生の頭を撫でる、いつもは嫌がるくせしてここ最近はされるがままにさせてくれてるのは恐らくこちらの些細な心の変化に気付いているからだろう
「……名前さんの恋人ってどのような方だったんです?」
敢えて、"恋人"という言葉を使ったのだろう
それにしてもどのような人か、
「ヘラヘラしてて、ゆるくって、」
関西弁で、隊長の威厳ってなんだっけ?と思うくらいふざける時はふざけてたし、仕事だって隙さえあればサボりたがる人で、思い返せば情けなくなることばかりだけど、
「だけど誰よりも暖かくて太陽みたいな人だったよ」
そうだ、記憶の中の彼はいつだって輝いてる
「真生ってね、ほとんどあたしの瓜二つなんだけど」
真生の目を真っ直ぐみる
当の本人はもう少しやる気のなさが滲み出てたが、この瞳の色は、琥珀色の目は
「目だけはね、真子の目なの」
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