10:明日も笑っててくれるただそれだけでいいの


尋常ではない緊張感が漂っている
戦場に着くや否や雛森副隊長が加戦に向かう

「日番谷隊長、すみません」

霊圧が一瞬乱れる、若さ故だろう
本来、連れてくるべきではなかったのは分かってる
ただ、私が雛森副隊長と同じ立場なら同じ選択をした

「斑目三席、」

治療致しますので、と声を掛け吉良副隊長と声を掛ける

「名前姉さん、その副官章……!?」

ゆっくり息を吸う

「私の七番隊副隊長として最後の務めよ、」

狛村隊長、射場副隊長、ご無礼をお許しください、

「愛川隊長……」

ようやく、決心がつきました
檜佐木副隊長と射場副隊長がやられるのを見る

「吉良副隊長は松本副隊長と雛森副隊長をお願い、」

「名前さん、まさか」







「縛道の八十一"断空"」

「やれやれ……総隊長を前に出させるとは……情けない隊員達じゃの」

のう、苗字?と言われる

「それは私に片付けろとおっしゃっていますか?総隊長」

「片付けられぬ程、腕が鈍ったか?」

ハァーッと大きくため息をつく

「吉良副隊長、結界を強く張ってくれる?」

山本総隊長が、後ろに下がる

「あんたたち、強そうだから手加減はなしね、」

「"卍解"」








「101年経っても変わらぬか、」

「そうそう変わってられませんよ、」

弱くなったら愛川隊長に怒られますから、と言う

「まだ、奴らを待っておるのか、」

「えぇ、永遠に」

















「あれは、黒腔!?」

吉良副隊長が叫び、空に目をやる

「まさか、まだ加勢できる奴がいるだなんて、」

「名前姉さん、行ってください!」

すぐさま、浮竹隊長・享楽隊長の所に行く

「破道の九十"黒棺"」

ダメ元で鬼道を放つが、叫び声で黒棺が壊される、そんな馬鹿な、

「悪ぃな、姉ちゃんやる趣味はないんだけどなぁ」

「……破面!?」

「ワンダーワイスが出てきたってことは藍染サマがもうまてなくなっちまったってことだ」

虚閃を身体に撃たれ、痺れて動けなくなる
そのまま意識を失った、










遠くで懐かしい声が聞こえる

名前

昔はよく、サボってたら愛川隊長がわざわざ五番隊にまで迎えに来て怒鳴ってたなぁと思い出す

名前

中々心を開かない私に、時間をかけてゆっくりと見守ってくれた
私が副隊長として務めるべき隊長は愛川隊長だけだ、

名前

私はもう死ぬのかな、愛川隊長の声が鮮明に聞こえる

「……名前!オメェいつまで寝てやがるんだ!」

「痛い!!」

目を覚ませば懐かしい顔、そして頭に鈍い痛み、
あぁ、これが私の日常だった

「ったく俺が見てねぇと直ぐにサボりやがる」

「隊長こそ、私以上にサボりすぎですよ、」

ようやく重たい身体を上げ、隊長を見る
現世の出で立ちをしてるものの、あの頃と同じ、愛川隊長がそこにいた
素直になれずに、憎まれ口ばっか叩いてたあの当時を思い出す

「ねぇ、隊長?」

ずっと言いたかった言葉、

「無事のご帰還ありがとうございます、おかえりなさい」

「馬鹿野郎、」

そう言って瞬歩で目の前から消えた
101年前からずっと言いたかった言葉がようやく言えた
見上げれば懐かしい面々が見える



ワンダーワイスが叫び出したのを皮切りに闘いが再び始まる
そこには私の知らない101年間があったのがよく分かった

「名前ちゃん、」

彼ら強くなったねぇ、

享楽隊長が言う

「えぇ、寂しくなるくらいに、」

私の知らない101年間、それがどれほど長かったのかがよくわかった

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