05:目を瞑ったら雨で全てが流れてくれますか

「へぇ、喜助さんが十二番隊隊長に昇進するんですか」

かつての上司である夜一様が七番隊執務室に突如として現れたことで執務室の中はてんやわんやだ
恐らくここに来るということは何かしらの理由があってだろうなと思い、部下達には早めの昼休憩を命じた

「名前、お主はほんに反応が薄い奴のぉ、砕蜂に言ったら百面相しておったぞ」

「別に喜助さんが卍解を習得してるのは知ってますし、あの人の実力なら隊長になってもおかしくはないでしょう」

「隊長になって、技術なんちゃらというものを作るのが喜助の目的らしいからの」

「あぁ、どっちが本職だかわからなかった趣味を護廷十三隊に取り入れるんですか」

趣味にしては勿体ないほどの技術ですからね、と返せば驚いた顔をされる

「てっきり興味がないものと思っとったがのぉ、」

「例の物を壊す為にも二番隊にいるよりも新しい隊の方が夜一様も良いと思ったのでしょう」

「ほんにお主は可愛くないのぉ、」

お茶をズズっと飲むかつての上司と目が合えばため息をつかれる

「それにしてもこんなに続けて三席、四席と抜けて二番隊は大丈夫なんです?」

「ほぉ、お主からそのような言葉が聞けるとはのぉ!頭でも打ったか?」

「……そりゃ育てて頂いた古巣ですからね」

「案ずるな、儂の後釜としては砕蜂がいるからの、むしろ奴は二番隊以外適さんじゃろ」

まぁ言われてみればそうだ、とも思う

「まぁお主に言えることは万が一にも最悪なことが起こった時に、お主と砕蜂は護廷十三隊にいるべき人間じゃということじゃ」

「らしくない言い方をしますね、ちなみにいつ喜助さんは十二番隊隊長になる予定なんです?」

「たった今推薦しての、明日隊首試験じゃ、喜助には明日の朝言う予定じゃ」

「そんな機密情報言っていいんですかね……」

十二番隊隊長と言えば猿柿副隊長の所か、何だか荒れそうですねと言えば驚かれた顔をする

「名前が他人に興味を持つとはのぉ、ほんにお主何があったのじゃ」

「あたしってそんなに冷酷非道な人間でしたっけ……」

ま、上手くやれてそうで安心したわ、とあの不敵な笑みで言われてしまったら何も言い返せなくなる

「ま、こちらはしばらく忙しくなりそうでの、また1週間後に会えるのを楽しみにしておるぞ」

とだけ伝え、瞬歩で消えるかつての上司を見送る
スっと息を吸い、廊下に声を掛ける





「藍染副隊長、長らくお待たせ致しました」

「まさか、気付かれてたとは」

「一応霊圧操作に長けてた二番隊に所属してたので」

心優しいしっかり者と評判の副隊長にしては随分とらしくない霊圧の消し方をするな、というのが彼に抱いた最初の印象
まるでこちらの話を盗聴するような、いや、わざと聴きに来たかのような行動に寒気を覚える
愛想もないと自覚してる自分が言うのもあれだが随分と貼ってつけたような笑みを浮かべる人だ

「毎年恒例の行事で新年度の初めは五番隊と七番隊の席官同士で合同訓練を行ってるんだ」

「へぇ、」

合同訓練なんて生まれて初めてやるな、と思う
霊術院の頃には他学年で合同訓練というものがあるとは聞いた事あるものの飛び級だったからやらなかった

「主に席官同士で戦うんだけど、副隊長の手解きもあるんだ」

「へぇ、面倒ですね」

「……そんな隊長みたいなこと言わないでくれよ」

思わず苦笑いをする藍染副隊長を見る
どこまでが彼の本当なのだろうか、
大方の概要が書かれてる書類にざっと目を通しながら藍染副隊長に話しかける

「合同訓練の件は愛川隊長に捺印を頂き次第苗字から直接平子隊長にお伺いさせて頂くと平子隊長にお伝えください」

「ああ、わざわざすまないね」

助かるよ、と胡散臭い笑みを浮かべて退室する藍染副隊長を見つめる







何だかあまり好きになれそうにない
まるで太陽を隠す雨雲みたいな存在だ、と思った