ナナバ。
ナナバ。
どれだけあなたの名前を読んでも返事はもう聞こえない。
どれだけあなたを探しても何処にもいない。ねぇ…ナナバ。何で私を置いていったの。分かっていた。この世界は残酷だという事を。ナナバが1番死に近い仕事をしている事も。いつか、こんな日が来る事も…分かっていた。
分かっているの…。分かっているけど…頭で分かっていても心が追いつかない。
私はナナバが全てだった。貴族の奴隷同然だった私を助け出してくれたのがナナバだった。その時からナナバが全てで…私の世界はナナバが中心に回っていた。
私の心の中はカラッポでずっと雨が降っている。どうしたらいいの?ナナバ…ナナバがいない世界で私はどうやって生きてたらいいの。ナナバが死んでからずっと降り続けている雨はもう止みそうにない。
「ハル…。もうナナバはいないんだよ。」
ゆっくりと顔を上げればハンジがとても悲しそうな顔して私を見ていた。そんな顔しないで。私だって分かっている。ナナバがもう居ない事なんて。カラッポのお墓の前に居てもなんの意味も無い事も。
「ハ…ンジ。」
泣いて泣いて泣いて…。枯れてしまった私の声。もうどれだけ泣いたか分からない。今はもう涙すら出てこない。
「ハル…。」
「分かってる。分かってるよ…ハンジ。ナナバは…もう居ない。何処にも…居ないの。」
そう言うとハンジは、私を抱きしめた。あったかい…。ゆっくりハンジの背中に腕を回した。悲しい…悲しいよ。ハンジ…。肩が冷たい。服が濡れていた。ハンジの涙で。
「ハンジ…世界は…残酷だね。」
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