03


どさりとベッドに降ろされる。
目を覆う布があるのに、じろりと見下ろされている感覚。
先生の目線の先に気づき、どっと変な汗が出る。


腰が抜けて五条先生に自室まで運ばれたことでもう既に情けないのに。

ついにばれてしまった。


先生の声で、俺が反応したことが。



「渚、僕言ったよね」

「ぅ、」

頼みの綱のヘッドフォンを着けようとしたら、ベッドに乗り上げた先生に取られた。
なんだかいつもより雰囲気が怖い。


「寮だから、気を付けてって」


隠すように足を閉じると、片手でいとも簡単に開かれた。
つう、と反応しているそこを、布越しに撫でられる。


「あぁっ、ん、なにっ」

意味がわからない。
やめてほしい。

そんな思いとは裏腹に、体は期待していた刺激に反応してしまう。


「ぁ、んっ」

弱く継続的にくる刺激にもどかしくなる。
やだ、やめろ。
抵抗したくても力が抜けてできない。
ぐ、と目の前の先生の体を押してもびくともしない。



「またかわいい顔してたね」

また?


そうだ。入学する前。
車の中で五条先生が言っていたことだ。

思い出したとはいえ、言葉の意味がわからない。


荒い息づかいが静かな部屋に響く。
目の前の先生の言動に理解が追い付かない。


「渚」


形の良い、先生の唇が俺の名前を紡ぐ。

間近で、はっきりと。
ずくん、と体の奥が反応する。

熱が身体中にじわじわと広がっていく感覚。



目の前にいるのが担任の先生だとか、

置いてけぼりにしてきた虎杖の呆けた顔だとか、

先生の声でこんなんになった体とか、


そんなことよりも、はやく楽になりたかった。




「せんせ、さわって」

視界が滲む中、先生の服を掴んで、舌足らずな言葉で必死に伝えた。



このときの俺は、どうかしていた。

いつもなら、走ってトイレに駆け込んで事なきを得ていた。なのに今日は。


一番ばれてはいけない人にばれてしまった。




「うん、いいよ」


恋人に言うみたいに、とびきり甘く優しい。
大きく、熱い手で頭を撫でられる。
自分が先生の恋人だと勘違いしてしまうほどだ。


ちゅ、ちゅ、と音を立てて額、頬、耳にキスされる。


「んぅ、」

耳を唇で撫でたり、舐めたりと、執拗に責められ、ぞくりと腰をしならせる。

耳が弱いことを自覚している俺は、先生は絶対好きな子をいじめるタイプだ、とどこか遠くで思った。


いつの間にか脱がされたのか、下半身は何も身に付けておらず、先生の熱い手がつぅ、と足の付け根をなぞり、ぴくりと反応する。


どこを触られても、きもちいい。


出ていた我慢汁を潤滑油にして、ゆるゆると上下に擦られる。

緩い刺激がもどかしい。

もっと、と思ううちに、先生の胸に猫みたいにすり寄っていた。


それを境に、だんだんと動きが早くなる。


片耳が温かい、と思えば先生に舐められていた。ずくり、とダイレクトに腰にくる。

止まらない律動。



もう、だめだ。


そう思って先生の顔を見上げると、気づいたのか、俺の耳元に顔を寄せた。



「イけ」


「ん、ぁあっ、〜〜っ」


響いた低音が脳をしびらせ、ずくんとまた反応した。
と同時にぎゅうう、と側にあった先生の服を握って絶頂に達した。

びく、びく、と気持ちいい余韻に浸りながら息を整える。
先生の手にある白濁をぼんやりと見つめる。



「かわいい、渚」

「……」

汚れた手とは反対の手で俺の汗ばんだ前髪を横に流してくれる五条先生。


「渚?」

無言で撫でられる俺に顔を覗き込んだ。



「忘レテクダサイ」

「え、」




このときの俺は、どうかしていたのだ。