◎ 01 「あーあ、降ってきちゃった」 放課後、帰ろうとしたちょうどそのときに土砂降りの雨。 全くもってついてない。 傘とか持ってないのになー。 「へー?傘忘れちゃったんだ?」 「げ、新井くん」 「隠そうともしないんだねそのリアクション」 いっつも突然現れるから本当心臓に悪いよね!! 「翔音クンは一緒じゃないの?」 「うん、さっき橘くんに連れてかれてどっかいったから」 「あ、そういえばそうだったね」 「うん」 「………」 「………」 「……もしかして、”じゃあ俺の傘にはいる?”なんて展開期待してる?」 「し、してないよそんなん!!学校から家まで歩いて20分だし!?走って帰れる距離だし!?」 「あ、そうなんだ。なら大丈夫そうだね」 「え」 「じゃあまた明日」 「え?あ、うん……また、明日」 あああ私の馬鹿ああああ!! 素直に入れてくださいとか言えばいいことなのにいいいい!! はぁ、傘が去っていく。 大事だからもう一度言おう。 新井くんではなく、傘が去っていくのだ。 いくら距離が近いからってこの土砂降りの中流石に走って帰れない。 誰か他の人を待つか、誰かの忘れ物の傘奪うか。 さて、どうしよう。 「傘奪ったら泥棒になるよ?」 頭の上から声がした。 「……あれ?新井くん、帰ったんじゃ、」 「泥棒なんて物騒なこと考えてる人がいるから戻ってきちゃった」 「いやそれどうやって察知したの」 またエスパーか?エスパーなのか? 「まあこんなに土砂降りじゃあ走って帰れないだろうし、他に当てもないだろうと思って、ね」 「………」 「……今日は特別」 「……え?」 「傘、入れてあげる」 新井くんはさしていた傘を私に傾きかける。 「あ、あり、がとう」 今度は素直に、その傘に入った。 「これっていわゆる相合い傘だよねー」 「それを言うなって!!入りづらくなるでしょ!!」 「走れば大丈夫じゃない?」 「ちょ、さっきと言ってること違うでしょ!?この雨の中走ったら風邪ひくって!!」 「大丈夫だよ、馬鹿は風邪ひかないっていうでしょ?」 「それって、馬鹿は風邪ひいても気づかないから馬鹿ってことだよ?」 「うん、だから、そのとおりでしょ?」 「どういう意味だああああ!!」 prev / next [back] |