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「……あれ、桐原くん眼鏡してる」



英語の参考書を借りようと図書室にはいると、席に座って本を読んでいる桐原くんが目に入った。



そして彼の顔には黒縁眼鏡。




「桐原くんって目悪かったの?」

「……芹菜先輩、いつからいたんですか」

「いや、今来たばっかだけど」

「なんだ、ずっといたけど影薄くて気づかなかったとかじゃないんですか、よかったですね」

「何もよくねーよ、会ってすぐこれか」



この性格どうにかしてくれよ誰か。

あれか、いつも橘くんのお世話的なことしてるからひねくれちゃったのか?




「それで、質問の答えだけど……?」

「普通に生活するぶんには眼鏡なくても平気ですね。本を読むときや勉強するときにかけるくらいです」

「なるほど」



でもそういう人は結構いるよね。

むしろ私の近くにはいつどんなときでもグラサンかけて、外してるところなんてほとんど見たことがない変人がいるくらいだから。





「うーん、黒髪に黒縁眼鏡かー……」

「……?なんですか?」

「いやさ、なんかいそうじゃん漫画のキャラとかで、黒髪に黒縁眼鏡で毒舌な図書委員キャラなイケメンとか」

「合ってるところ黒髪と眼鏡だけじゃないですか」

「毒舌とイケメンも合ってるでしょ」

「合ってません」

「いやいや合ってるって……あ、でも桐原くんは毒舌ってわけでもないか」



毒舌っていうのは柚子みたいな人をいうのだ!!



「うん、桐原くんは毒舌よりか、生意気ってほうが合ってるね、あとツンデレとか」

「勝手に人のキャラ作らないでください、不燃ゴミに出されたいんですか」

「この人私のこと捨てる気だ!!」

「……間違ってはいないですけど、その妙な言い方もやめてくだい、不愉快です」



うん、私も言ってからちょっと思った。
そしてとても不愉快そうな顔してるよまじで。

思えば桐原くんの笑顔とか見たことなくね?
え、というかむしろ翔音くんより笑わないよね。





「思うんだけどさ、桐原くんいっつも真顔か不機嫌な顔しか見たことないけど、笑ったりしないの?」

「芹菜先輩の前で笑う必要があるんですか?」

「うん、みたい」

「急に笑ったら不気味じゃないですか」

「じゃあ面白い話するから笑ってくれる?」

「確実に時間の無駄ですね」

「ひどっ!!」

「そんなことよりも本を読ませてください。あと少しなんですから」



そう言って桐原くんは私から視線を本に戻した。


本の題名には”歴史が語る真実”と書かれている。

……歴史好きなんだ。

というか本分厚ッ!?

余裕で5cmはあるよねぇ!?





真剣に読んでいるため、私は邪魔しちゃ悪いと思って、借りた参考書を開いて桐原くんの正面の席に座った。














どれくらい時間がたっただろうか。

ずっと参考書を見ていたせいか、だんだん眠くなってしまった。


目が閉じようとするのを頑張って阻止する。




そのとき、パタンと本を閉じる音がした。


眠たい目をなんとか開けて正面をみると、どうやら桐原くんは分厚い本を読み終えたようだ。



「全部読んだんだー?面白かったー?」

「まあまあですね。……眠そうですね、芹菜先輩」

「うん、ずっと参考書見てるとさすがにねー」



ふわぁぁっと欠伸をして参考書を閉じると、桐原くんも読み終わったので眼鏡のレンズを拭いてケースにしまうところだった。



「……あれ、眼鏡とっちゃうの?」

「読み終わったので、もうかける必要ないですから」

「ふーん、そっかー」

「……何か言いたそうですね?」

「ん?いや、眼鏡かけてた人が急に眼鏡とると、なんか物足りない感じしない?」



違和感とかあるときもあるよね。

なんか顔のパーツ消えた?みたいな。




「俺はもともと眼鏡かけてないじゃないですか」

「うん、まあそうなんだけどさー、なんかちょっともったいないなーと思って」

「は?」

「黒縁眼鏡、似合ってたからさー」

「……………………」





……あれ?

黙っちゃったんだけど……何故。




バシンッ



「いったああああ!?」



いきなり桐原くんに頭はたかれた。


なんだよ、目がばっちり覚めたよ!!



桐原くんをみると、ものすごーくしかめっ面でこっちを見ている。




「……本気で不燃ゴミに出していいですか」

「なんでだよ褒めたのにいいいい」




ツンデレってわからない!!



不意打ちの威力は計り知れない

黒髪に黒縁眼鏡いいよね


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