01


「ねえ芹菜チャン、じゃんけんしよう?」

「……は?」




そろそろ帰ろうと思い鞄を持ったところで、新井くんにそう声をかけられた。




「……なんで?」

「いいからいいから」




なんだかちょっとあやしい気がする。

これは何か企んでる……?




「やだなー、別に企んでなんかないよ」

「うわっ、また心読まれた!?」

「じゃあいくよ、じゃーんけーん……」

「えっ、ちょぉ……まっ」




新井くんの言葉に反応して、咄嗟に出してしまった私の右手。




私→パー

新井くん→チョキ




「…………………」

「俺の勝ちだね」




チョキの手をVサインに見立て、素晴らしいほどのニコニコ顔でそういってきた。





……何そのチョキチョキした動き、折っていいかな。






「はい、じゃあ俺の代わりに掃除当番よろしく」

「…………え」




渡された箒とちり取り。




「俺これから用事あるんだよね」

「いや、ちょっと……!?」

「優しいね、芹菜チャンは。助かるよ」




助からねーよ私は!!




「よ、用事って……何?」

「んー?何、俺のこと知りたいの?」

「言ってねーよ」

「冗談だよ、そんなことあったら鳥肌たっちゃうから」

「酷くない!?」








「ちょっと担任に呼ばれてるんだ」

「説教っ?」

「嬉しそうに言わないでくれる?芹菜チャンならまだしも、俺はありえないでしょ」

「…………なんで私のまわりには毒を吐く人ばっかりなんだろう」

「芹菜チャンが、可愛くて……っ、仕方がないからじゃない?」

「笑いを堪えて言うな」






「それじゃああとよろしくー」

「え、あっ、」




ニコニコしたまま新井くんは教室を出ていった。



………や、やるしかないのか。





「あれ、芹菜ちゃんて掃除当番だったっけ?」




後ろからクラスの女の子に話しかけられた。


箒をもってるとこをみると、彼女も掃除当番なんだろう。




「ううん、違うけど……新井くんに押し付けられた」

「ああそういえば新井くん、先生に資料運ぶの手伝ってほしいって言われたんだって」





え、何それ聞いてない。


この子には事情説明したのに私には言わないんか!!

たった一文ですむのに!!





若干苛立ちを感じながらも私は手を動かした。



箒で床のゴミを集めたり、机を運んだり。




うわ、誰だこの机の持ち主!!

フックに荷物かけすぎだからっ、重い!!











「あー……、やっと終わった……」




時間的に考えればたったの30分くらいの掃除だけど、疲労感はそれ以上に感じられた。



とくにあの机たちのせいだ。


あの重い机を10個くらい運んだんだからそりゃあ疲れるよ。




「掃除当番じゃないのにごめんね?ありがとう、助かったよ」

「あ、うん……どういたしまして」




同じ当番だった子にお礼を言われるが、不本意での手伝いだったからちょっと複雑な気分だ。



まあでも教室も綺麗になったし損ではないか。







「あ、ちょうど掃除終わったみたいだね」




仕事を終わらせたらしい新井くんが教室にもどってきた。




「……ちゃんとした用事あるなら普通にいってくれればいいのに」

「うん?ああ、説明するのめんどうでさ」

「……そっちは終わったの?」

「まあね、図書室に資料とか本を運ぶだけだったし」

「………つまり担任にパシリにされたんだねっ?」

「え、何?」

「何でもありません」



怖い、今目が笑ってなかった!!



「でもありがとうね芹菜チャン、俺のかわりにやってくれて」

「不本意だけどね、……異様に机重かったし」

「クスクス……、じゃあそんな頑張った芹菜チャンにはご褒美をあげようか」





そういうと新井くんは私の口の中に何かを入れた。




「んむっ!?……な、何入れた今!?」

「飴だよ、飴」

「飴?」





あー、確かにほんのり甘い味が………………………、





「、んんんーッ!?な、何これ……っ、」




確かに今口の中にあるのは飴だ。



でも、なんというか、甘いようなそうでないような、まろやかだけど飴にするには甘くないような……………。







「コーンポタージュ味だよ」


「ばかあああああああああッ」






飴だから甘いっていう先入観をもって食べたから余計に変な味に感じる!!




口の中がおかしな味で広がってるよ。


こんなご褒美いらないから!!



ご褒美が甘いとは限らない

(頭撫でてあげるほうがよかった?)
(それこそいらない!!水っ、水をください!!)
(俺の飲みかけのお茶しか持ってないよ)
(お願いだから新品の水持ってきて!?)


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