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日常15の裏話




やっとめんどうな授業が一区切りついた昼休み。

クラスの奴等はチャイムと同時に購買にいくのが日課らしく、今日も慌ただしい。




俺はそんな中普通に弁当を食おうと思ったけど今日はそうもいかない。


朝練のとき昼休みにミーティングをやるとか部長にいわれたからいかなきゃならない。



貴重な昼休みまでも部活で潰れるとかあり得ない。




俺はため息をつきながらも教室をあとにした。












廊下を歩いててふと思った。



……橘先輩、絶対ミーティングのこと忘れてるよな。



自由な性格してる人だ、そんなの忘れて呑気に弁当食ってるに違いない。




やっぱり俺が連れてこないといけないのか。





あんなんでも橘先輩は副部長。
そして俺は次期副部長。
そんな繋がりがあってあの人のことは何故か俺が面倒をみるようになった。


普通逆だよな。


そんな繋がりハサミで切って本人ごと海に沈めてやりたい。



けど俺が連れてこないと誰も連れてこようとはしない。
もう他の先輩たちにとっては日常すぎて慣れてしまったんだ。




あああめんどくさい、何で俺が。





「「かにくりーむコロッケパン」」



まさかこんなベタな展開になるなんて思わなかった。






ミーティングに行かないと言われたときのために先輩の好物かにクリームコロッケパンを買おうとした。


たったそれだけなのに、俺と同じ注文をした女子生徒。



……見たことない顔だし、多分1年だ。

下級生ならここは遠慮ってものをするのが常識じゃないのか?


なんでこう面倒なことが重なるかなぁ。








「あー……、このパンあげるよ。私が食べたいわけじゃなくて頼まれたものだし」



場所を移動して渡されたパン。

けどもとはといえば橘先輩が忘れてる(今までの経験からして)からいけないんだ。


俺がわざわざ世話焼いてパンなんか買わなくてもいいじゃんか。




「……俺も別に。あんたと同じで俺も先輩にあげるために買おうとしただけだし」

「いや先輩にあげるんならなおさら受け取ろうよ」

「いいんだよ、どうせあげんのは橘先輩なんだから」

「先輩なめてる!!」




1年のくせによく喋る女子だ。





「……橘先輩って、あの赤髪の橘くんのこと?」



一瞬目をぱちくりした。
橘先輩を知ってる?
まぁ副部長だし目立ちたがりやだから知ってるかもしれないけど、こんな女子ファンの中にいたか?



「ん?あぁ、あんた知ってんのか?」

「うん、まぁ同じクラスだし」

「……………………へぇ、同じクラスだったんですね」




先輩だったのか。
身長に騙された。



俺が敬語になったとたん、目の前の先輩は驚いた顔から少し不機嫌な顔になった。


理由はすぐわかった。
俺が先輩を下級生と思ってたからだ。
本人も声に出てるし。




「よくわかってるじゃないですか」

「ちょ、何で心の声がっ」

「声にでてますよ」

「ていうか私を先輩だと思ってなかったのか!!」

「だから今敬語にしているんじゃないですか」

「顔みれば気づくでしょ、見たことない顔だな、あぁきっと先輩なのかなって!!」

「その思考でいって俺は後輩だと思いました」

「失礼極まりない!!」

「先輩が俺より小さいからいけないんですよ」

「アンタより大きい女この学園にいねーだろーがあああああ」




変な女子に会った、俺はそう思った。






この人が橘先輩と同じクラスなら俺も先輩のクラスに行こう。


少し話してわかったけど、この人頭がどうかしてる。


わざわざパンあげるために先輩のクラスにいくわけないのに。










3年の教室、つまり2階へと向かっているその途中のときだ。



先輩から名前を聞かれた。

知ってどうするんだとおもったけど、妙なあだ名で呼ばれそうだったから正直に答えた。





ふーん、この人藍咲先輩っていうんだ。

俺は名乗れなんていってないけど。






クラスに着くと藍咲先輩は友達に呼ばれるようにして中にはいっていった。



目で追ってると、その輪の中に紫色の頭をした先輩がいた。
多分あの人が橘先輩曰く、“俺の好きなやつ”。


もちろん友達としてって意味だ。



そしてその人の隣には俺がここへ来た原因である橘先輩。



やっぱりミーティング忘れてた。




俺は自分に渦巻く黒いオーラに気づかないふりをしてその輪に近づいた。






「俺のかにくりーむコロッケぱあああんっ」



輪に近づくなり聞こえてきた橘先輩の声。


幸せそうな顔をして俺が買う予定だったパンを頬張ってる。


一刻も早くゴミ収集車で回収されて欲しいですねこの人。







「何してるんですか橘先輩」

「もふぁ?」

「今日の昼休みはミーティングがあるって何度言えばわかるんですか」

「あっ!!…………………よし、俺は今日欠席ってことで!!」

「何言ってるんですか、パンのかわりにサッカーボール突っ込みますよ」

「うん、行こうかミーティングに!!!!!!」





食べていたパンを一気に飲み込んで素早く答えた先輩。


本当に世話が焼ける人だ。





「……貴方が翔音先輩、ですか?」

「……?」



俺は隣にいる紫色の頭の先輩に声をかけた。



それに藍咲先輩が反応する。



「翔音くんのこと知ってるの?」

「橘先輩がよく俺に話してくるんですよ、“今日翔音がなっ、翔音がなっ”って。まるで恋する乙女ですよ」




これは本当のことだ。




「部活の休憩中のたびにいってくるんです。俺は恋する乙女の話を聞く友人でもないのに。まったく、身の程をわきまえてほしいですね」

「それどっちかっていうとアンタのほうだよね」







毎日のように俺に話しかけてくる。
純粋できらきらした顔で。

勘弁してほしい。






「……とりあえず俺達はもう行くんで。面倒だとは思いますが橘先輩をお願いします」



こんな人だけど副部長。

こんな人だけど俺の先輩。

こんな人だから誰かがいてくれなきゃならない。




部活では(不本意だが)俺がいるけど、学園生活では無理がある。



だから、俺がいないときは……。



そんな意味で、“お願いします”。






頭をあげたとき、藍咲先輩と目が合った。




「何ですか?」

「いや、なんか桐原くんて橘くんの保護者みたいだなって」

「星になりたいんですか?」

「あれ!?死亡フラグ!?」







せっかくの昼休みがこんなことで大幅に潰れた。



けど不満ばかりあるわけじゃないのは事実で。




こんな面倒ごとだけど、





嫌いじゃない。



生意気後輩と平凡先輩

(ほら、いきますよ橘先輩)
(せっかくの昼休みなんだけどなぁ……)
(仮にも副部長なんですから行かなきゃ駄目です)
(別に1日くらいサボったって……なぁ?)
(ほら、逝ってください橘先輩)
(おいィィィ漢字違う!!何、俺殺られんの!?)


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