01


とある平日の放課後。
いつも通りの授業を終えてさぁ帰ろうというときだった。


「つっかれたー……」


自分の席でぐーっと背筋をのばす。
ホームルームが終わって、他の生徒たちは部活にいったり喋ってたりと、それぞれの時間を過ごしていた。

私もそろそろ帰ろうかなー。
今日は夕飯どうしよう。


「翔音くん、今日の夕飯……、あれ?」


後ろを振り向いてそこにいるであろう美少年に声をかけてみたが、当の本人はどこにも見当たらなかった。

どこいったんだろう?


そんなことを思っていると、教室のドアが開いて、そこから噂していた美少年がやってきた。



「あ、翔音くんおかえり。今日の夕飯何食べたい?」

「………」

「……?翔音くん?」


何故か俯いたままで表情が見えない。
どうしたのかな。


「大丈夫?何食べたいのかなーって思って」





「……うるさい」

「……、え?」

「俺に話しかけないでくれる」



冷たい目をしながら静かにそう答える。
そして自分のカバンを持つと、そのままスタスタと教室を出て行ってしまった。

一気に教室全体の空気が冷え切った。
今の翔音くんをみてみんながざわざわしている。
普段あんなこと絶対にいわない翔音くんが、優しい翔音くんが、と、まわりからたくさん聞こえてくる。



え、
ええええ!!??
か、翔音くんが……、反抗期!!
なんで、私何かしちゃったっけ?
……しょうがない、今日は1人で帰るしかないか。

すると、翔音くんと入れ替わるようにして教室に入ってきたのは桐原くんだった。
また橘くんに用かな。


「芹菜先輩」

「あれ、私だった。どうしたの?」

「今日、一緒に帰りませんか?送りますんで」

「え」


…………え!!??
何、何があったの!?
翔音くんといい桐原くんといい、なにが君たちをここまで変えたの!?




「今日もお疲れ様です。疲れてないですか?」

「え?あ、うん、まあ大丈夫だよ」

「そうですか。……あ、そこ段差あるんで気をつけて下さい」

「え、あ、ありがとう」

「……荷物重そうですね。俺が持ちますよ」

「え?うん。ん?ううん!!」

「遠慮しなくていいんですよ?」


桐原くんが優しい。
大切なことだからもう一度いう。
桐原くんが優しい。
もうほんとに純粋に。
裏とか全然ない感じの、素でやってる感が出てる。

え、何コレ。



「桐原くん、」

「何ですか?」

「……何か、あったの?」

「?何のことですか?」

「だって!!……今日の桐原くん、いつもじゃ考えられないくらい優しいし、気つかってくれるし!!」

「いつもこんなんでしょう?」


思い出せぇぇぇぇ!!
普段のアレが優しいの部類に入ってたら、今日の桐原くんは天使か何かになるわ!!

そんなこんなでよくわからずも桐原くんに家まで送ってもらっている。
そして家の近くまできたところで見覚えのある顔ぶれが。


「……あれ?翔音くんはわかるけど、何故新井くんと橘くんが……?」


新井くんと橘くんはとてもいい笑顔でこっちを見ていて、翔音くんに関してはさっきからムスッとしている。



「お疲れ様、棗クン。どうだった?感想は」

「……どうせ聞いてたんでしょう?」

「うん、ばっちり。それで?」

「反吐が出ますよ、この悪趣味男」

「褒め言葉として受け取るよ。こっちは大いに楽しめたからねー」


え?何?
話がさっぱりわからない。
桐原くんがいつもの調子に戻ってるし。


「棗ー、おつかれーい!!面白かったよマジで!!」

「金平糖は黙って下さい」

「それ俺の頭の事言ってる!?」



どういうことなの!?



「そろそろ芹菜チャンに説明してあげないと可哀想だねー」

「可哀想は余計だ!!どういうことなの?」

「罰ゲームだよー」


ニコニコしながらいう新井くんに、はてなを浮かべる。
罰ゲーム?今のが?


「4人で何回かババ抜きをやってね。勝った人は負けた人に命令ができるっていうルール。本当は罰ゲームは1人だったんだけど、翔音クンも棗クンも同じ数だけ負けたから、2人にやったもらったってわけ」

「……な、なるほど?それで、その罰ゲームの内容は?」

「”普段とは正反対の自分を芹菜チャンに見せてくること”」

「……え?」

「だから翔音クンには冷たいキャラ、棗クンには優しいキャラを演じてもらってたってわけ。どう?楽しかった?」


今日一番のにこーという笑顔を頂きました。
引っ叩いていいかな?いいよね。
さあ、まさに私が新井くんに向かって手を上げようとしていた瞬間、誰かにその手をぎゅっと握られた。


「………」

「……翔音くん?」


さっきからむすっとしながらこっちを見ていたけど今も同じ表情のまま私の手を握ってきた。
離してくれる気はないみたい。


「翔音くん?」

「………」

「かーのーんくーん?おーい」

「………さっき、言ったこと……嘘だから」


さっき、とは、帰る時に翔音くんが言った言葉だろう。
いくら罰ゲームとはいえ、あんなこといったことがないから気にしてたのかな。


「大丈夫だよ。本心で言ったんじゃないってわかったし。怒ってないよ」

「……うん」


にへらっと笑いながらいうと、少し安心したのか、翔音くんの表情も少し柔らかくなった。
でも完全に表情は戻らないし、手もにぎにぎされたままだけど。



きみの反応がみたい

「なあ、何で翔音はずっとむすーってしてんの?」
「きっと芹菜チャンが棗クンと2人で帰ってきたからだよー」
「ああ、なるほど!!棗〜、お前も罪なやつだなぁ〜」
「橘先輩の明日のドリンク、俺の特製ですからね。楽しみですね」
「嫌ァァァ何入ってんのォォォ!?」


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