25


翔音くんに引かれながら来たのはグラウンド。
道案内したのは私だけど。



体育館の横にも水道はあるけど、今は観客がたくさんいてあまり使える状況じゃないから、ここを選んだ。




水道の前がすぐグラウンドになっていてちょうどサッカー部が使用している場所だ。




つまり今は球技大会の種目であるサッカーの試合が行われている。





それを横目に翔音くんは水浴びをしはじめる。




「……これ、持ってて」

「?」




渡されたのは翔音くんがいつも身につけている2つのヘアピン。


ああ、確かに水浴びするには邪魔だよね。





頭から水をバシャアアとかける。


……豪快だな。







ビショビショになった髪をタオルで拭いていく。



けどここにはドライヤーなんて便利なものはないため、完全に乾かすことはできない。




ふきおわってもまだ微妙に濡れている髪が顔にはりつく。


翔音くんはそれを鬱陶しそうにかきあげた。

何この無駄なかっこよさ。





首にタオルをかけてるし、髪はほぼオールバック状態。




髪から首筋へと伝う雫がきらきらと光ってよりイケメンさがアップしている気がする。






同い年なのに……!!


何でこうも色気がありまくりなのかなあ!!



しかもそれが無意識だなんて、なおのこと恐ろしい!!

「み、水浴び……終わった?」

「ん。…………どこ見てんの」

「い、いや、どこって……」




私、只今翔音くんから目を反らしております。




いつもはお風呂上がりでもドライヤーで乾いてるからなんでもないけど、今は普通に濡れてるんだよ!?


水も滴るなんとやら!!



太陽の光で雫がきらきら光っちゃってるし。



何このビジョン!?

私暑さで頭どうにかなったのかなあ、末期だよこれは!!






ピタッ



「ひっ……冷たっ!?」




頬に何か冷たいものがあたった。


見てみるとそれは翔音くんの水で濡れた手だった。





「え、な……な、何……」

「顔赤いから、暑いのかと思って」

「あ、暑い、けど……暑いけども、」

「……冷たい?」

「……冷たい、けども……」





ああああ駄目だ頭がおかしい。

顔がとてもあつい。


というか違う意味で暑い!!




………熱中症かな。

私も頭から水かぶろうかなあ。








「おおおおいっ、翔音ーっ!!」




グラウンドの方から翔音くんを呼ぶ橘くんの声が聞こえた。


というか声でかすぎ。





「おおっ、なんだ、藍咲も一緒だったんだ!!」

「あ、うん」

「……お前顔赤くねえか?」

「えっ、い、いやまさか!!」

「もしかしてやっとコクったのかっ!?」

「鼻に水いれるよ」

「なあ、もしかして翔音が出る試合もう終わっちゃった?」

「……さっき、終わった」

「ええーっまじかよ!?うわあ俺見たかったのにいいい」

「でも勝ち上がったらまた次の試合あるんじゃない?後半戦、新井くん出てたし勝ったと思うけど……」

「そっか、2回戦か!!じゃあ俺見にいこーっ」




楽しそうにニカッと笑う橘くんは無邪気な子供そのもののようだ。






「橘くんは試合終わったの?」

「いや、今前半終わって休憩中。俺らのクラスのサッカーチームは交代枠少ないからなかなか代われねえんだよなあ」

「それにサッカー部だしね」

「そうそう。サッカー部のやつ抜けたらヤバいから俺フル出場なんだ」






うげーっというような顔をしてそういう橘くん。


たしかにこんな暑い中外で試合に出ずっぱりだと辛すぎるだろう。




ああ、私はバレーでよかった。


まあでも体育館じゃ風がないから暑さはそう変わらないけどね。




あ、そろそろ私も試合の時間かな……。





「翔音っ、俺の試合見ていかねえか?」

「……見てく」

「よっしゃ!!ぜってー点決めてやる!!藍咲も見てくだろ?」

「あぁぁ……、私はそろそろ試合だと思うから戻らないと」

「そっかあ残念。藍咲も頑張れよっ、俺もいっぱい点決めて良いとこ見せるんだ、翔音に!!」




翔音くんはアンタの彼女かよ。







「じゃあ私は体育館戻るね」

「ん」

「おーう、頑張れよ!!」




2人と別れると私は小走りで体育館へと向かった。




あ、翔音くんにヘアピン返すの忘れた。




「あああ芹菜どこいってたのー?もう試合始まるよーっ」

「ごめんごめん、ちょっと話こんじゃって」




バレーのチームメイトに呼ばれ私は急いで準備する。






そして全員が並んで相手チームと挨拶をかわす。





あぁぁ……、私バレーに出場するとはいえ、まるっきりのド素人なんだけどなあ。



消去法で種目探したらバレーでしたー、みたいな。



だ、だって1人1種目は絶対だからやらないなんて選択肢はないわけだし……。






こうなったらもうやるしかない。


体育の授業で、ある程度のパスくらいならできるようになったからそれでいくしかない。


私はとにかくつないでこう。







そう思って挑んだ試合。




選手のレベルはどっちも同じくらいだった。


私のクラスにはバレー部がいないため、みんな素人。

相手のチームにもバレー部はいないようだ。




けどやっぱり元々運動神経のいい子とかは素人なりにもちゃんとアタックしたりブロックしたりしている。




それを見てすごいなあなんて感心している私。


………もちろんちゃんとパス繋げてますよ?







そして試合もおわりに近づいてきたころ。




私もみんなもパスをつなげてつなげて相手コートへ。


けど運悪く待ち構えていた相手チームの1人がアタックする体制にはいった。



あ、ヤバい、決められる……!!



バシッとボールに当たる音と同時に私たちのコートへとボールがくる。






けど、その子がいくら運動神経いいといっても素人は素人。


アタックがコースを外れる時がある。







バチィィィンッ!!!!



「っぅあ……ッ!!」





私の方にアタックはこない。



打とうとしている子の視線を見て油断していた私がいけなかったんだ。

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