◎ 22
チュンチュンと鳥の鳴き声が耳にはいる。
カーテン越しからでも差し込んでくる太陽の光に眉が歪み、窓に背を向けた。
ゆっくりと目を開ければぼんやりと自分の部屋が見えてくる。
目覚まし時計をみれば午前8時15分をさしていた。
ああ……そろそろ起き…………。
「だっぱああああああああっ!!!」
ああ、これは遅刻である。
「……藍咲、お前……寝坊か?」
「そーです」
1時間目は運悪く(良く?)担任の授業。
先生には哀れみの目を向けられた。
クラスには笑われる始末だ。
「まさか芹菜が遅刻とはねー、びっくり」
「なかなか珍しいですねー」
休み時間になると玲夢と柚子が話しかけてきた。
そう、私が遅刻は珍しいのだ。
いつもならちゃんと目覚ましで起きるのに。
朔名め、自分私より早起きなんだから起こしてくれたっていいじゃん。
自分だけ普通に仕事行っちゃってさあ。
今度朔名の靴紐キツく結んで履きづらくしてやる。
午前中の授業がおわって昼休み。
そういえば、今日は翔音くんの姿をみていない。
いつもなら真面目に授業受けてるんだけどな。
学校には来てるはずだ。
朝家をでるとき、翔音くんの靴無かったし。
どこいったんだろう。
「なぁ藍咲ー、翔音見なかったかー?」
橘くんがこちらに歩いてきた。
「私も探してるんだよねー、今日は一度も会ってないし」
「マジかよ。どこいっちまったのかなあ」
「翔音くんに用事あるの?」
「用事じゃねーけど、俺も今日みてないからさ。藍咲は用事か?」
「ううん、違うけど。ちょっと言いたいことあって」
「も、もしかして、告白……っ!?」
「ぶっ飛ばすよ」
考えが女の子みたいだ。
さてどこにいるかな。
保健室、体育館、トイレ、屋上……。
「まぁ無難に屋上にいそうだよね」
「ああ、今日あったかいからなー。いってみっか!!」
そして私たちは屋上に向かうのである。
階段で最上階まであがると、さすがに足が痛くなった。
橘くんはサッカー部だし毎日運動してるから全く疲れていないみたいだ。
くっそーう、こういうところで運動部と帰宅部の差がでるんだよね。
屋上に着き、その重い扉をガチャっと開けた。
外にでると、心地よい風がサァっと吹いた。
太陽の光がぽかぽかしててすぐにでも眠くなりそうな良い気候だ。
「えーっと、翔音くんは……………あ」
そんなに探さなくてもすぐに見つかった。
屋上のど真ん中で手を頭の後ろで組んで寝ていた。
「おー、やっぱりここにいたか」
私たちは翔音くんのところまで歩いていく。
そしてとりあえず起こそうとして隣にしゃがんだ。
「つーか藍咲、お前しゃがんだらスカートの中見えるぞ?」
「もし見たら地の果てまで蹴り飛ばすから安心して」
「それのどのへんに安心すればいいの!?」
というわけで、私は念のため正座することにした。
起きないかなーと思って顔を覗きこんでみる。
翔音くんの顔に私の影がかかった。
ああ、ほんと綺麗な顔してる。
寝てるときはこんなに可愛いのになあ。
いったい何を間違えたんだか。
すると、翔音くんは若干眉間に皺を寄せて薄く目を開けた。
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