(スモークスクリーン×ウルトラマグナス)R18



約束事はひとつだけ、最後までしないこと。この場合、彼の言う最後とは挿入を意味していた。これまで何度も夜にベッドで落ちあっても、中を触れようとも先へは進めない。スモークスクリーンはやや偏執的な男を恋人と呼称してみたかったが、奥手とは無縁の鉄面皮は否定する。これ以上の何を明け渡せばそれが許されるのかは知らされない。彼は、ウルトラマグナスは語らない。そのくせ下の口はやたらに饒舌であるし強欲だ。体の相性だけはいい。候補、あるいは暫定、代理のセックスフレンドと言うには相応しかった。

挿入以外であればウルトラマグナスはある程度のことは許容する。例え求めずともベッドの上では積極的だった。初夜はさすがに男役を担ったスモークスクリーンの言いなりにはなったが、それからはほとんどの場合、それなりに気遣っているつもりなのか自発的にフェラチオをした。今夜も例に漏れず、股の間で頭が上下する。
「あー……っ、なんっで…そんな上手いかなぁ」
「ん?イきほうっん、ぅ、なら…ふなおに、んっ…出せ」
「ま、だっ…ぁ、う……ッそこ、あ、ヤバい、かも」
コネクタを咥えて嬉しげに射精を促す舌は巧みだ。裏を真っ直ぐに通るわずかに隆起した筋をなぞり、雁首に舌の先を引っ掻けて緩く擦られ、膨張に伴い等間隔にうまれた細い溝に至るまで、丁寧に愛撫される。それからウルトラマグナスの口内に溜まった唾液や多量の先走りが吸い上げられると、嫌でも導管の中を駆けあがるものを自覚させられた。
「はっぁっ、ちょ、吸うのっ…い、いきそ、に……っなるから」
「ぅん……ッふ、…今日は随分と粘るな」
舌技もさることながら、ウルトラマグナスは視覚的にもスモークスクリーンを煽るのが上手い。下品な音を立てる口元を緩ませ、自身の尻へ伸ばされる大きな手を思わず目で追ってしまう。開かれたハッチの中にもぐり込む指に厳つい肩は揺れて、ゆっくりと出し入れする様を十分に見せつけられるのだ。潤滑油でじっとりと濡れた体内を想像するほど欲望が高まる。
「ねえ、ウルトラマグナス、入れさせてよ。口じゃなくてさ」
「駄目だ。はん、ども…んっ……いわひぇるな、スモーキー?」
「何だよッ、それ…っぇ、ず、る……っ」
「我慢せず私の中に出せばいい」
「そ、の台詞っ……、ぁっ、突っ込んだ時に言っ…はぁっ、ぅくッ……あっ!」
そして次の瞬間スモークスクリーンは呆気なく吐精した。喉の奥まで招き入れたコネクタの先を中で締めつけるのは、ウルトラマグナスの得意とすることだった。それをされてしまうと、どうしたって抗えない強い快感に下肢が震える。溢れたものはもちろん、中の残滓までをきつく吸い上げられ腰が浮く。余韻を押しのけて悔しさが突き抜け、スモークスクリーンは手の平で顔を覆い隠しながら後ろに倒れ込んだ。
「っくしょ……またイッちまった……」
「まあ、いい記録が出たんじゃないか」
「うるさいよ!」
折角の野心はいつも砕かれる。あっけらかんとしたウルトラマグナスの口ぶりにも腹が立った。先に達してしまった敗北感から、主導権を奪うことも出来ない。スモークスクリーンの未熟な若さを利用した後に、ウルトラマグナスはのろのろと身体を寄せる。甘えた仕草で手を取り、先ほどまで慰めていたレセプタに押し付けて熱く排気されれば、再び欲望に火がついたようになった。
「こんなにしてんのに、指だけなんて……ほんと、酷い」
拗ねて唇を突き出しても、落ち込んでいる暇もないだろうと濡れた穴は指の先を噛んだ。それだけでゾクリと痺れが背筋をなぞる。スモークスクリーンは腕の位置を決めて深く呼吸して、ウルトラマグナスがゆっくりと腰を落とし、立てた2本の指を飲みこんでいくのを眺めた。身体を支える腕は後ろにつき、軽く仰け反るような体勢で、融けだしそうな瞳をしていた。
「はっ……ッ、ん…ぅ、あ……ぁあ、ん」
「……あーもう…っ、すっげぇどろどろじゃん」
指の長さなどたかが知れている。すっかり根元まで入ると、ウルトラマグナスは腰を揺らせて中を確かめさせ、スモークスクリーンが顔を歪ませるのを楽しんだ。端正なフェイスプレートにはいやらしいことばかりが書いてある。心からの接続を望むその熱意にはくらくらときた程だ。濡れた屹立を押しこめて、一心に腰を穿たれたら、どれだけ気持ちがいいだろう。想像にとどめ快感に変える術は、長い時を経て培われていた。
「この中を、知ってる人がいるんだよね」
「ふ、っ……妬いっ、ッ、…ても、仕方がないんじゃ、なかったのか?」
「だって、最初で最後の男なんて憧れるし、俺としてるのに思い出すくらいならさ」
ずるずると緩慢な動きでレセプタを刺激しながら、スモークスクリーンはもう片方の手でウルトラマグナスの腹に触れ、何度も記憶を読みとれはしないかと思った。唯一語られたことのある、淫乱の身体を通過していった男を描く。レセプタのすぐ前についたハッチをこじ開けて現れる大ぶりのコネクタにはどんな愛撫をしたか、脳内で生みだした影の真似をしてみた。
「こうやって、してくれてた?してくれなくても、イけるのは知っていた?」
「んぁ、ぁっ……っは、ぁ、…あ、ッ……く、ぅ…!」
「あー……やっぱ、答えなくていいや。ごめん」
「いいの、か?別に、私は……っふ、ぐっぁ、あぅ、んっ」
「うん。それより、俺のことも……もう一回イかせてよ、……ウルトラマグナス」
スモークスクリーンは野暮な問いかけを引っ込めて、腰をくねらせて天井を仰ぐ巨体に息を飲んだ。指に絡む粘液をかき混ぜるようにレセプタの内部を犯すと、硬度を取り戻したコネクタが大きな手に握られる。ウルトラマグナスは器用に揺れて、快感に身を委ねるのに慣れていた。独りよがりに思える情事だが、生真面目な性格が作用してかスモークスクリーンが蔑ろにされたことはない。
「ぃッ、いい、ぁっ……気持ち、い、ッ、うぁ……っんぐ、あンっ、あっ」
ぐぷぐぷと次から次へ漏れ出る液の量と、あまりに素直すぎる無防備さに脳が痺れていく。スモークスクリーンは不思議なほどにウルトラマグナスと感覚を共有しているのがわかっていた。前後の境もなく濡れていく姿を見ているだけで、麻薬じみた快感に浚われる。ともすれば簡単に射精に追いやられそうなのを、必死に遣り過ごすのがせめてものプライドだった。
「そろそろ、っは……っう、ぁ、あっ、もう、……出そ、う」
「あ゙ぁッ……っあ、ぐぅ、ん……ッう…!っは、あっぁあ、ぃ……ッ!」
対して、ウルトラマグナスはべとついたコネクタから、断続的にオイルを吹き上げるばかりだ。スモークスクリーンの助けがなくともレセプタのみで達する身体は、ただ記憶しているに過ぎない。そうして爆発的な興奮の中の一点の憂いは、たったの一瞬身を潜める。過敏な指で追い上げ、次に訪れる目の前がスパークした一瞬のみ、スモークスクリーンは許された気になった。
「……っく、マグナス…!」
「っは、ん゙ぅ……ひ、ぃッぁあ、っあ゙!」
ほとんど同時の絶頂だった。収縮するレセプタの最奥へ注ぎこむように、手の中で二度目の放出を済ませると、スモークスクリーンは脱力して指を引き抜く。その間も、ウルトラマグナスは暫し放心した様子で仰け反り、痙攣する。やがてどろどろに汚れた下肢は崩れ、尻をついた反動で頭だけがガクリと前に倒れた。
「……大丈夫?」
スモークスクリーンはおずおずとヘッドパーツに手を伸ばし、柔らかく唇を寄せる。
「…ふ、ぅ……ッ、く、っは……はぁ……」
「いいよ。こっち身体預けて……疲れたでしょ」
「ス、モ……ク、ぅっ…スク……っぁ」
ウルトラマグナスは声に反応しながらも、何度も深く呼吸を繰り返す。手が縋るように肩へかかり、スモークスクリーンは胸の影の間で唇だけが動く気配を敏感に感じ取り、目を閉じた。



150214
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