(ホイルジャック×ラチェット)R18



「久しぶりの逢瀬だ、もう少し可愛げのある顔をしてくれてもいいんじゃないか、ドク」
「うるさい。それとドクと呼ぶな」
ホイルジャックの愛機スターハンマーの中でラチェットはむっつりと腕を組んで不機嫌を隠そうともせず、ホイルジャックは溜息をついた。いつものように放浪の旅からなんの前触れもなく帰ってきたと思えば、有無も言わせぬ手際の良さでラチェットを浚ったのが原因なのだろうが、恋人同士という関係を考えれば、ホイルジャックとしては納得のいかない歓迎だった。目も合わせてくれず、いい加減ワケを話すなり諦めるなりしてほしいものだが、これはこれで可愛いと思ってしまうのだから恋とは恐ろしい。
「やれやれ。知っているか、怒ると皺が増えるのだそうだ」
「お前のその顔に消えない傷でもつけてやろうか」
「おー怖、……冗談はさておき、そろそろ機嫌を直してくれないか」
「なら今すぐ引き返せ。私はお前ほど暇じゃないんでね」
「そいつは出来ない。何を怒っているか知らんが、俺のことも考えてくれ」
すっと指を伸ばして頬を撫でると、びくっと驚いたのが可笑しくてつい頬がつり上がる。そのまま唇をなぞっても先ほどの刺のある言葉の一つも出てこない。ラチェットが素直じゃないのは今に始まったことではないし、こういった触り方をすると初なことに動けないこともホイルジャックは知っている。そしてこの先の行為まで教え込んだのは他ならない自分。対等に付き合っているつもりでもどこか優越感があり、征服欲を掻きたてられて、長い人生苦労の連続だ。
「あんたに触れたくて帰ってきたんだ、あそこじゃギャラリーが多いだろう?」
「な、に…」
「食わせろって話さ」
手をひらりと舞わせて、スターハンマーを停めるとホイルジャックは操縦席から立ち上がった。
そして、ラチェットに近寄るとすぐさま唇を奪ってそのままシートを倒して押さえこむ。何日かぶりのキスにラチェットは案の定、一瞬抵抗の色をみせたが、腕はホイルジャックの背に回された。こうなってしまえば後はもう押し切るだけだ。先ほどまでは拗ねていただけに過ぎない。ほとんど待つだけの役周りで、振りまわされてばかりの彼だからこその可愛らしい意地だとホイルジャックは見抜いていた。今や人間も出入りする賑やかな空間は好きだが、触れられないという我慢は体に悪すぎる。
「う…待て、ここはどこなんだ?」
「何処でもいい。ほら、こっちに集中しないと痛い思いをするぞ」
「ば、馬鹿を言うな…そんなことをしてみろ…っ」
「分かってる。飛びきり優しくしてやるから、俺だけ見てな、ラチェット」
ラチェットは悔しそうにホイルジャックを睨みつけたが、観念したようでわざとらしい溜息をついて自分からキスを返した。
「おかえり、ホイルジャック」
「ああ、ただいま…」
額をコツリと合わせて互いに柔らかい笑みを浮かべる幼い睦み合いも十分に満たされる。しかし、ホイルジャックはラチェットの下腹部へと手を這わせ、行為を期待してかかすかに揺れた腰に表情を変えた。秘部を覆う硬い装甲をノックしてみせると、ラチェットが名前を呼ぼうと口を開いて、やめる。
「そんなに…私に触れたかったのか?」
「そりゃもちろん。あんたはどうだ、俺に会いたかっただろう?」
「……当たり前だろう」
「いい子だ」
声を合図にカシャンと音を立ててラチェットの体がホイルジャックを受け入れる為に稼働する。他の誰も触れたことはなかっただろうコネクタとレセプタが露わになり、それだけでずくりと体温が上昇する。幾度か情交に使用したレセプタは素知らぬ様子でぽっかりと口を開けているが、縁に指をかけるだけで強請るように潤滑油を漏らしながらキュルルと収縮する。酷く扇情的な光景にホイルジャックも同様に準備をした。
「俺のいない間、慰めたりはしたのか」
「まさか…そんな暇はない」
「なら今のうちにたっぷりと気持ち良くしてやらないとな」
「は、あッ…くう…っ」
ホイルジャックが再び今度は深くレセプタに指を挿入しコネクタをもう片方の手で掴むと、ラチェットは軽く身を逸らせて膝を合わせようとしたが、阻まれる。ホイルジャックはその間に器用に割り込み情欲の籠った目で笑みを浮かべながらラチェットを責め立てた。ぐちゅぐちゅと淫猥な音とうっすらと熱を持った金属の擦れる音が響き、快感で体が震える。
「あ、あくっ…ふ、ぅ…ん、んぅっ、ああっ」
「もうどろどろ、だ」
言いながらホイルジャックも、ラチェットほどではないが漏れ出たオイルで下肢をべっとりと濡らしていた。心なしか声も上ずり、余裕のなさが窺える。ホイルジャックもそうそう想いに耽り処理していたわけではなく、本人を目の前にしただけでオーバーヒートしてしまうのをなんとか抑えているのだ。
「そろそろいいか?俺ももう、入りたい」
「あ、ああ…あー…もちろん」
「…体勢を変えるか?後ろからの方が楽だろう?」
「そ…れじゃあ、お前の顔が見れない…このままでいいから…」
「あまり可愛い事を言うな」
折角の努力が水の泡になりそうだと零してホイルジャックは熱を持つ顔に手を当てる。そのオイルまみれの手をラチェットは何か言いたげに見ていたが、それに気付いてわざとらしく舐めとって見せるとぱっと顔ごと視線を逸らされた。逐一愛らしい恋人に参りつつ、ホイルジャックは自身のコネクタをレセプタへ宛がう。そして、緊張で体が強張るのをキスで宥めて、ゆっくりと腰を進めた。
「ん…つらくないか、ラチェット」
「平気だ…あっわっ、ま、動…!」
「コラ、違う。動きやすいように移動してるんだ、我慢しろ」
「とは言ってもだなっ…ぁ、ひっ、擦れ…あっ」
根元まで埋めてから移動のために軽く揺さぶっただけでもラチェットは体をくねらせ、思い切り突き上げてやりたい衝動にも駆られたが、ぐっと堪える。そして緩やかに律動を開始した。内部がそれに合わせて締めつけ、ラチェットも切なげな声をあげて応えている。ホイルジャックはラチェットの腰を掴み、少しずつ速度をあげていく。
「ホイル、ジャッ…う、ううっ…ん、ああっ…はあ…ッ」
「気持ちいいか?」
「あ、ああっ…いい、…熱くて、っ…す、ごい」
ガチュッガチュッとぶつけるように交わる。お互いに腰から下をべっとりと濡らしながら一心に貪り合った。機内に熱気が籠り、思考も鈍ってしまうほどの快感が渦を巻いている。
「も、もうっ…ホイルジャック!」
「ああ、先にイっていいぞ」
「うあっああっ…!」
言葉尻の突き上げでたまらずにラチェットは達し、大きく脈打ったコネクタから溜めこんだオイルを放った。その間もホイルジャックは止まることなくレセプタの内部を擦りあげ、絶頂の余韻に浸ることもできずにラチェットは首を振って抵抗した。熱を処理しきれずにブレインサーキットがショートしそうなほどの波が何度もくる。
「駄目だっ、あっホイルジャック、あっ嫌だ、んぐっ」
「悪いが、俺が出すまで止まれんな」
「イ、イけよもう!」
「はは、なにもう少しだ。ラチェット、逃げないでくれ」
強く抱きしめられてしまうと逃れようもない。
「ひぃっ!あ、お、奥ッ…にっ、いっ…や、め!」
「…出すぞ」
ぐんっと奥の狭まったところにまで侵入したホイルジャックのコネクタが跳ねる。それと同時に少量ではあるが再び達してしまいながら中に注がれたのを自覚して、ラチェットはようやく弛緩した。もたれてくるホイルジャックの頬をゆるく撫でたのは無意識のことで、整わない呼吸に紛れて手の平に何回もキスをされると、口に欲しいと思ってしまうのが恥ずかしかった。それを見抜いたのかホイルジャックはレセプタからオイルが漏れるのも構わずに体をずらし、そっと欲しいものを与えてくれる。
「強引に連れて来て悪かった」
「…もう怒ってない…その、私も意地を張って悪かったよ」
「気にするな。だがあんたは素直な方が可愛いからな、これからもそうであって欲しいものだ。こちらはずっと素直でかわ」
ベチンッとそこそこの力で平手をくらいホイルジャックは苦笑したが、今の振動でいいところを擦られたのかラチェットはびくりと体を揺らした。それをホイルジャックが見逃すわけもなく、今度はわざと擦りあげられる。睨んでも、むしろそんな反応を楽しんでいるように意地悪くにたにたと笑われて、到底敵わないのだと諦めるほかない。
「さて、第二ラウンドといこうか、ドク」
ホイルジャックが左胸のインシグニアに口づけるのを見届け、ドクという呼び方に突っ込むのもやめ、ラチェットは「マジかよ」と目を閉じた。



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