(オーバーロード×フォートレスマキシマス)R18



口内に残った砕けた歯の欠片を舌先で追いながら、オーバーロードが笑っている。フォートレスマキシマスが押し付けられた唇の感触に冷めた気持ちで応えるのは、これでようやく片足に打ち込まれた杭の数を越えたところだ。繰り返し行われた機体への責問は、ここ数日覚えている限りではぴたりと止んでいた。意識がないうちに仕掛けられている可能性がないわけではないが、それを確かめる術もなくただ耐えることだけに専心する他ない。
「マックス、私が何か君の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのかな?」
フォートレスマキシマスは問いを無視して白い歯を吐き出した。まとわりついた透明なはずの緩衝液がピンク色に濁っている。頬の歪みは小さなものだがフェイスプレートの下を傷つけるには十分だったようだ。するとオーバーロードが笑みを深めて離れ、慰めるようにフォートレスマキシマスの腹を撫でる。毒々しい赤のオプティックを細めていやに感情的な手の動きで触れることが何よりも苦痛だった。
「言ってごらん、マックス。痛いことはもう終わりだから、そんな顔をしないで」
見え透いた嘘だ。下腹部を撫でさすれば、硬い装甲も意味をなさずそれだけで内部機構までも犯され狂わされる。ハッチを開けてぽっかりと開いたままのレセプタを探る、その感触をまざまざと思い出し、フォートレスマキシマスは静かにはくはくと口を開閉させた。「いやだ」と声を絞り出したつもりだが、絶叫以外で己の声を聞くのは久しくそれが正しく発せられたのかもよくわからなかった。
淡々と、けれど全身が溶けだすような甘さと熱を持ってオーバーロードはフォートレスマキシマスに触れた。こぼれる粘液を掻きまぜ責め立てるように慰めの手を止めることはない。やがて落とされる吐息のひとつひとつに媚びが含まれ、オーバーロードが歌うようにマックス、と呼びかけてフォートレスマキシマスの不自由な片足をものともせず膝へと乗せた。そして膨張したコネクタの濡れた先端をレセプタへと潜り込ませ、腕の中で傷だらけの機体が震えるのを楽しむ。
「私はずうっと君に優しくしたかった。君に酷いことをする度に、苦しかったよ」
「は、あ……っ、う、っ…あ、あっ」
ずるずると腰が下りていく。誰かの支えなしでは儘ならない体にコネクタが容易く侵入し、拒むこともなく内壁が擦られる感覚に戦慄いた。垂れ下がるだけの腕をオーバーロードの肩にかけられ、抱き合うような体勢にさせられるとフォートレスマキシマスは屈辱に耐えかねて嗚咽した。どんな拷問にでも抗う心を失わなかった強固な自我が、呆気なく砕ける。
「ああ、マックス、ああこんなのは初めてなんだ。本当だ、私は本当に、君が好きなんだ」
「ぐぅ…っ、んッ!」
オーバーロードが囁き軽く揺さぶり一息つくと、緩やかに律動が開始される。スローペースのあくまでも優しい突き上げに歯噛みする。中で擦り切れた襞がコネクタが出て行こうとするたびに恋しげに吸いつき捲れ、再び奥へと入り込めば漏れたオイルとの摩擦に快感を生んだ。フォートレスマキシマスは枯渇した冷却水の代わりに、尽きることない循環液の涙を流し何度も殺してやると吐き捨て、訪れることのない解放を祈ることも止めた。ここで誰もが流した血を、未だ生きたオプティックから流している。己から漏れ出た液で濡れたガーラス9の一画に切り取られた世界で、オーバーロードから与えられる全ての痛みに、泣いていた。
「マックス、聞こえているんだろう。君が好きだよ、君が好きだ、マックス」
「嫌だ、あっ…、いや、だ、やめ、ろ」
「私を受け入れて、私を愛しなさいマックス。ほら、私を呼んでごらん」
「ひぃ…!い、あ、ああっ、あ、ぐぁ…!」
今となっては恋しい暴力的な凄まじい圧迫感に機体が仰け反る。だが直ぐに訪れたのは甘すぎるオーバーロードの口付けだ。ふくよかな唇から絡まされた厚い舌と注がれる唾液には、殺意も敵意すらもない。一途な優しさに暴かれる事実から、何もかもを断ち切って逃げ出したくてたまらないのに叶わない。フォートレスマキシマスにはぴたりと寄り添った胸を押し返す力も、残されてはいなかった。
「君を愛しているよ、フォートレスマキシマス」
「オーバーロー、ド」
もう恐れを抱く心もない。耐え難い痛みが、快楽の顔をしている。スパークが爛々と輝くほどの激情の前にフォートレスマキシマスは破顔した。
「ありがとう、マックス」
初めて、オーバーロードの微笑みを美しいと感じた。



140307
リクエストありがとうございました。
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