(ホイスト×グラップル)R16



「またかい、グラップル」
ぐったりともたれかかる黄色い機体に手をかけ、呆れた声でホイストは無防備な鼻を指先ではじいた。いつになくご機嫌で楽天的な笑みは愛おしくもあるが、すっかり出来あがってしまった様子に繰り返し溜息を吐く。グラップルは酒の類に弱い、本人もそれを十分すぎる程にわかっているくせに、ついつい気分が盛り上がれば飲んでしまうのだ。特にホイストという監視の目から外れれば、この通り。以前も同じことがあった。翌日になって頭を抱えながら反省するグラップルに、珍しく険しい口調でぴしゃりと言ってやったのは、まだ10日前のことだ。
「私がなんて言ったのか忘れたわけじゃあないだろう?」
「飲んでも飲まれるなって?でもね、私にだってお付き合いってものがあるんだよ」
「なら周りに迷惑をかけずに飲むことだ。ちゃんとセーブすること。いいね?」
「わかった。ごめんって。それから…迎えにきてくれてありがとうホイスト。次は気を付けるよ」
確かにそんな会話をした。そうしてホイストはグラップルと別れた後に、その日の飲み相手であったボディカラーがやたらと赤い連中に念押しに行ったものだ。それも効果はなかったようだが。過保護と言われようが許されるならば常に寄り添っていたい、そんな胸の内を知らずにグラップルは時に奔放だ。
「ねえホイスト…それ、外してくれないのかい…?」
グラップルがとろけきった甘え声を出して左手のノズルでこつこつとマスクを叩く。
「駄目。知ってるだろう、私はキス自体あまり好きではないしにおいも」
「もう!意地悪だな君は!」
「グラップル、暴れないでくれ。落ちてしまうよ」
大きめと言っても1人用のスラブの上、手足を振り回せばずり落ちていかないこともない。腰の抜けた状態でここまで運びこむのにも骨が折れたのだ、ホイストはその腕を掴んで強引に落ち着かせた。それが意図せず組み伏せる形になり、思わずバイザーの下で目線を逸らす。頬の赤みと拗ねて尖らせた唇を再び目にしてしまえば、抑止出来ないのではないかとそら恐ろしい。
「ホイスト?」
「…私はね、君に後悔してほしくないから言うんだよ」
五本の指で確かめるように胸から、そのままゆっくりと下へと辿っていく。グラップルの抵抗はない。気付いてさえいないのか、覚悟をしているのかぼうっと青いバイザーを見上げていた。危機感のない緩んだ頬が時々憎らしいことを分からせたいような、乱暴な感情だ。閉ざされた秘部をゆるく擦るとあからさまな吐息と共に、ハッチが開いてホイストを誘った。酔いからか排熱のために体が楽な方へと向かっているとわかっている。これが卑怯なことも重々承知だ。
「君が悪いんだ」
「うん。そうだね…っ、私が悪いよ、うん」
「笑ってる場合じゃないだろう。ねえ、グラップル」
「はは、だってさ、…ホイスト、ふふ」
「ああいいさ笑っているといい。今日の私はいつもとは違うからね、恨まないでくれよ」
レセプタに埋没した異物の痛みにひきつりながらもグラップルがおかしそうに笑った。こぷっとオイルが漏れだすのを確認して余裕のないそぶりでホイストが動いても、くすぐったさに身をよじるような、ただのじゃれ合いの延長線上にあるような気になる。コネクタを取り出して挿入を果たし内壁の蠕動に体を震わせる頃には、完全に毒気を抜かれてしまった。

夜が明ければ、頭を抱えながら反省したのはホイストの方だった。ねっとりとした液がこびりついたスラブと横たわったままのグラップルを背に、新鮮な情交の記憶に苛まれる。結局、そのつもりもなかった仕置きと称する一方的な仕打ちは失敗に終わり、いつも通りの接続で終わった。違った点をあえて言うならば回数だけだ。黙したホイストの落とす低い呻きと、楽しげな笑みを含んだ甘い泣き声が絡まり解けて3回。
「はあ…ごめんよ、グラップル」
呟いてホイストはマスクを開く。そうして寝顔にそっとキスをしようと覗きこみ、へらりと幸せそうな表情にぐっと留まった。こんな時くらいは意地悪だっていいのだと思いなおす。
「私はキス、好きじゃないからね」
言い聞かせるようにグラップルの頭を撫でて、敵わないなあと再び閉じたマスクの下で呟いた。



140304
リクエストありがとうございました。
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