(オプティマス×ラチェット)R18/擬人化



あの指で触れられたらどんなに気持ちいいかと夢想したことがある。初めて戯れで手の平を合わせた時に確信した気持ちが尾を引いて、それが浅ましい慰めの種になるということを彼は知っていただろうか。節の太すぎないすらりと長い指を持つ大きな手だ。つるりと滑らかな指の腹と整えられた爪の丸み、中節骨の線、浮いた血管、その全てが愛おしかった。ひとり老いて乾いていくこの肌を、一度でも情愛をこめて愛撫してはくれないものかと、祈りながら涙した夜の数を覚えてもいないけれど。

今はその切に願った手が惜しげもなく触れてくれる、その現実に甘ったるいめまいを覚えながら、ラチェットは煌々と光るモニターに触れないようにデスクに突っぱねた腕に力を込めた。オプティマスが肩口に顔を埋めて、念入りに洗い上げた体をそろりと舐める。普段の穏やかな彼からは想像もつかないほど淫らに体を這う手に、どうしようもなく興奮した。
「オプティマス、ここでするのか…?」
「今すぐ君が欲しいと言ったら、困らせてしまうかな?」
「…お前さんは時々すごくずるい…、そんなことを言われたら駄目なんて言えないだろう。わ、私だって…待ってたんだからな…」
「よかった。ありがとうラチェット。続けるよ」
項にキスを落とされて竦んだ体はオプティマスの腕の中にすっぽりと収まってしまう。約束に遅れることも珍しければ、こんな風にベッド以外の場所で求められたことなど想像もできなかった。期待を悟られないように再度着込んだシャツの中に手を差し込まれ、ラチェットはぶるりと身を震わせる。外出から戻ったばかりのオプティマスの手はひんやりと冷たく、それが腹から胸へのぼると無意識に奥歯を噛んだ。
「我慢はしなくていい。私しか聞いていないよ。私だけに聞かせてくれ、ラチェット」
そうは言われても素直に声をあげることは出来なかった。確かに快感はもたらされるが、そこがまともに性感帯として機能してまうことなど知りたくもなかったと、未だにラチェットは拒んでしまう。両手で平らな胸を揉みしだかれた後には、指先で器用に乳首を摘まれ、指の腹で捏ねられ、爪先でひっかくようにはじかれ、執拗にいじられたそこはぷっくりと赤く熟れる。いくら声を抑えても、丸まった体の陰に隠れた昂りは隠しようがない。オプティマスはそれに気付くとわざとらしく言葉にして、色づいた耳へそっと囁く。やんわりとそこに触れてやると催促するようにわずかに腰が揺れたのがわかった。
「オプティマス!」
「直に触ってほしいかい?」
「…わざとらしいぞ、きょ、今日はどうしたって言うんだ」
するすると優しく撫で、焦らすオプティマスにラチェットは抗議の声をあげる。これまでも素直すぎるオプティマスには恥ずかしい思いをさせられているが、今日は特に調子が違う。
「私はいつも好きに動いてしまうから、君の意見が聞きたい」
「意見って…私がああしてこうしてってお前さんに指示しろって意味なのか?」
「そうだ。どこをどうすれば気持ちがいいのか教えてくれ。君のいいように私が奉仕する」
その言葉だけでもラチェットは羞恥でどうにかなってしまいそうで、こんな時まで酷く真面目な顔をしているに違いない恋人を恨めしく思った。もう当の本人よりも知り尽くしているだろう手は、すっかり熱を持ち、ラチェットを期待させる。オプティマスはあくまでも言葉通りに指示を待ちながら、急かすように性器への愛撫を緩やかに開始した。
「さあラチェット、どうされたい?」
「わかったよ。まず、脱がして…じ、直に触って欲しい…そ、れで…軽く握って、そのまま…ぁっ扱い、て…ッ」
言葉をなぞるように大きな手が動きだす。すとんと下着ごと下半身の衣類のみを奪われ、尻に白衣が擦れる感覚にも熱い吐息が漏れる。オプティマスの手の平におさまったペニスが、待ち望んでいた刺激にとろりと液を零し出した。
「あ、あまり先っぽは…あっ、いじらないで…っ、で、出てしまうから…」
「先に出してしまっても構わないよ」
「いや、嫌だ…ん、ぅ…私が、もたなくなってしまう…い、入れてから、一緒がいい」
「わかった。そうしよう」
ぬちゃぬちゃと先走りを絡ませながらの愛撫に腰が引けてしまうのも手伝い、ラチェットは同様に猛ったオプティマスのものに尻を押し付けた。体は正直というもので、声で聞くよりもオプティマスの興奮を感じより体温があがるのを自覚する。片手でペニスへの愛撫を続けながら、肉付きの悪い尻を掴まれてラチェットは全身を震わせた。
「準備は、ぁっん、っ、してあるから…」
「少し解してからだ」
ラチェットは自ら白衣をまくりあげて、尻を突き出す。オプティマスがデスクの引き出しからボトルとコンドームを取り出すのを初めて目の当たりにしてしまうと、言い知れぬ快感にペニスが更に濡れた。当たり前のように彼が職務を果たすために使用する、いわば神聖な場所でなんてことをしているのかと涙まで滲んできた。
整った顔を上気させて、手に透明な液体をまぶし、それを慎ましく閉じた秘部に塗りこめられる。長い指を簡単に飲み込んだそこがひくひくと収縮するたび、堪え切れない高い声がするすると口から洩れてしまう。
「あっ、くぅ…っ!んぁ、そこ…あっ…そこは…だ…っ」
「ラチェット、たまには私にさせてくれないか。君のここはいつもやわ」
「し、仕方ないだろう…っ、んんっ、お前さんにはそんなこと…させられな…」
「…君の嫌がることはしたくないが、わかった。これはまた後で話そう」
「真面目すぎるのも問題だな…」
などと話しているうちにオプティマスは納得がいったのか指を引き抜く。どんな状況であれ、例えラチェットがいいと言ったところで無視はされない避妊具をペニスにかぶせる。どちらもセーフセックスを重んじているために付けないという選択肢はまずないのだが。
「私にも…つけてくれ、デスクを汚したくない」
「ああ」
後ろから抱え込むようにして、腹に向かい反りかえるラチェットのものにもかぶせると、オプティマスは待ちきれないといったように尻たぶを掴んだ。左右にぐいと肉を割り、ひくついた穴が晒される。そうしてラチェットは期待に濡れた声で、オプティマスを求めた。
太さも長さも熱さも十分な凶器とも呼べるようなペニスが、ゆっくりとその存在を知らしめるように入りこんでくる。ラチェットは喉を震わせて圧迫感に耐えるしかない。出来るだけ力を抜こうと意識していても、体を支えている手足を崩れないように叱咤するだけでいっぱいいっぱいだ。ぴっちりと埋め込まれた後は、何度も大きく息をした。
「ラチェット、やはりベッドに行くかい?」
「い、いい…っ…こ、こし支えて…くれれば、ふうっう、んぐっ、あっ…も、動いてもいい…大丈夫だ」
オプティマスがこくりと唾を飲み込む。尻の方から手を滑らせて、細い腰をしっかりと掴む。肌はしっとりと汗ばみ、手の平に吸いついてくるようだ。目の前のほっそりとした体はこんなにも熱く求めてくるのに、酷く頼りなく、切なさがこみ上げた。ぎゅっと抱きしめて振り向かせてキスをすると、初めて濡れたラチェットの瞳と目があう。そのまま再び唇を合わせながら体を揺らし、次第にだらしなく口が開いてしまうようになるまでじっと見つめていた。
「ほらラチェット、教えて」
「も、っと…もっと突い、て…オプティマス…ッ」
「どんな風に?」
「おく、奥までっ…!おねが、あっ、ああん…っ、うあっ、ひぃいっ」
従順な動きで与えられる快感にラチェットの体が仰け反る。長身なオプティマスと腰の位置を合わせるためにつま先立ちになった足が揺らぎ、どこもかしこもぴんと張り詰めて敏感になっている。もはや声を抑える余裕もない。オプティマスにも限界が迫っているのか徐々に呼吸も乱れ、荒々しく求められる。ラチェットが手をついたデスクが二人の動きに合わせてカタカタと音を立て、その激しさを物語っていた。
「オプティマ、ああっ、あ、い、いい…んんっ、きもち、いいっ」
「ああ、ラチェット…私もだ」
「い、一緒に…っい、いか、いかせて、くれっ」
肌のぶつかる音が大袈裟なほど響く。逞しい体に縋りつくことが出来なくとも、後ろから確かに優しい体温を感じることができる。ラチェットは振り返り首の痛みも忘れるほど必死に唇を強請った。今すぐにでも達してしまいそうなのに、ずっとこのまま繋がっていたいとすら思う。
擦れ合う舌までもが過敏で、オプティマスが間近に迫る絶頂を踏みとどまるためにラチェットのものを噛むと、くぐもった声をあげて体をよじった。口が離れて再び動きやすくなれば、オプティマスがより激しさを増して内壁を擦りあげる。突きあげられるたびに髪を振り乱し、ラチェットが掠れた声で泣いた。
「んあ、あ、あひっ…やっあぅうう…もっ、もう、だめだ…い、くっ…!」
俯いて叫ぶように達したラチェットと声を詰まらせたオプティマスが絶頂を極めたのはほぼ同時だった。
はあはあと忙しない呼吸の中、出来るだけ刺激しないように自身のペニスを引き抜き、ラチェットの上体を起こす。片腕で支えられるだけの痩躯をしっかりと抱きとめながら、コンドームを処理して、身なりを整える。それから汗ではりついた髪をどけてこめかみにキスをした。
「ベッドに行こう、歩けるかい?」
「…私はもうしない、っていうか出来ないぞ」
「何もしないさ」
「なら、連れていってくれ。上手く力が入らないんだ」
「了解した」
くすりと笑いあってオプティマスはラチェットの体を軽々と抱きあげる。広々とした柔らかなベッドに身を沈めて、ラチェットは大きく息を吸った。よく知ったにおいがいつもよりも濃い。甘えるように体をぴったりとくっつけたまま、オプティマスの手を取るとまだ熱く火照っている。濡れてはいないがついさっきまで互いの体液で濡れていたことを想うと、体の限界に反して熱がぶり返してしまいそうだ。
「ラチェット?」
「私はお前さんの手が好きだ…優しくて大きくて、こうして触れているだけで気持ちがいい」
ずっと昔、静かに本のページをめくる指に恋したことを秘したまま、ラチェットは音を立てて手の平に口づけた。



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