能ある鷹の隠すもの 1/2



鷹野静司は元トップアイドルの息子の所謂二世俳優だ。顔もスタイルも演技も一級品で、子役デビューしてからこれまで芝居一本とやってきた。のだが、とうとう事務所の方針だかなんだかでなんの縁もない旅番組にゲストとして出演することになり、現在はホテルの一室のベッドの上だ。

「やっぱり止めましょうよ、原さん」
「アホ。ここまで来て引き下がれるかい」
そして俺はビデオカメラを片手に、同じく出演者である先輩芸人の原さんの後ろで弱々しく意見していた。扉一枚の向こうでは鷹野が寝ている。深夜2時、寝起きドッキリには早すぎるこの時間に俺たちが何をしようとしているか。これは多分夜這いっていうやつじゃなかろうか。事務所にバレたらやばいどころではない。
「うし、行くぞ楠見」
そんな弱腰の俺を横に原さんは鍵を開けて中へ入る。俺は心の中で全力で謝りながら後へ続いた。真っ暗では眠れないのか、照明はほとんどその役目を果たしていて、レンズの向こうで鷹野の足をとらえる。掛け布団を肩まで被りながら動かない。夜の宴会で大分飲まされていたし、若い体には応えたんだろう。
「ちゃんと録れよ」
「……っす、わかってますよ」
指示通りに録画ボタンを押す。四角い画面で確認しながら、原さんが慎重に布団をはいでいく。浴衣を着て横向きに眠る鷹野の、裾を蹴って露になった長い足が見える。脛毛も傷もないつるりとしたもんだった。
先に言っておくが俺はストレートであり、鷹野がいくら美形でも変な気はおこさない。原さんと違って。ホモネタはやるがもちろん本気ではないし、原さんだってわかってるはずだ。けれど、俺は正直に生唾を飲み込んだ。
「たまらんなぁ」
原さんがねっとりとした調子で呟いた。今すぐ飛びつきたいのを堪えて手を足首に滑らせると、鷹野が小さく身動ぎする。俺はそれだけでびびっていたが、原さんはまるで動じずに、むしろ反応をもらえて嬉しいとでも言いたげにニヤけた。ベッドにあがり、もっと大胆に足を撫でている姿はAV男優みたいだ。
「楠見、お前も触るか」
「いっいいです」
「あっそ。じゃ俺だけ楽しませてもらうわ」
「端からそのつもりでしょ」
ひそひそ会話をしている間も原さんは鷹野に夢中だ。ギリギリに見えている太ももにまでその手が到達した。ズームで映すと濃いグレーの下着に小指がひっかかっていたのが妙にいやらしい。中に自分たちについてるようなチンコがあるとは思えない。何か扉を開きそうにもなる。
「若いってのはいいなぁ…肌すべっすべ」
エロオヤジ全開の原さんが舌なめずりして、肩を引く。鷹野はまるで起きる気配もなく仰向けに転がされた。上下する胸に目をつけた原さんが浴衣のあわせをそっと掴んで開いていくと、薄い胸板があった。膨らみなんかはもちろんない。温泉で見た時とはまた違って見えるのが不思議だ。今は原さんが欲情しているのもわかるし、武骨な手がその小さな粒を強調するように胸を揉み出すと見入ってしまう。
「……っん、ぅ…はっ」
鷹野が小さく声を漏らして、乳首を立たせる。それが快感からなのかはよくわからなかったが、原さんが指できゅっと摘まむと体がぴくんっと跳ねていた。くりくり刺激すると眉根を寄せて、悩ましげにくねる。官能的な光景を俺はただ黙ってカメラに映していた。犯罪の片棒を担いだも同然だっていうのに。
「んっ、は……ぅッ、ぁ……ぁ、ンッ」
「かわいい声出して感度もいいし。もしかして自分でいじってたりするんかな。なあ?」
俺に言ったのか聞こえてもいない鷹野への辱めの言葉か、原さんはとにかく楽しそうだ。ただ指でいじるだけでは我慢できなくなったようで、片方を舐め始める。舌先がぬるぬると乳首を愛撫する様を見ただけで興奮するなんておかしな話だ。そう思うのに、徐々に息を乱れさせる二人は今まで見てきたAVよりも全然エロかった。
「鷹野クン、乳首好き?」
「ふぅっ…!くっ、んぁ……はぁ、ぅんん……っ」
「うんうんそーかそーか。エッロいなぁ」
「ンはっ、ぁっ…ぅっ……ぃや、ぁ……ッ」
「おっと」
嫌という言葉に俺は背に冷や汗をかいて慌てて録画を停止する。さすがの原さんもぱっと体を離した。鷹野はもじもじと寝返りをうち、胸を守るように丸まった。生足がシーツの上を滑っていく。
「はっ原さんやばいですよ…!」
「でかい声出すなって」
でもぉ…と追い縋っても原さんはあろうことかその背中にぴたりと寄り添うように寝そべる。一応は焦ってるのか、ベルトを外す手はもたついて舌打ちも聞こえた。
「嫌ならカメラ置いて出てけ。この先こんなチャンス滅多にないだろ……それにもう、俺は我慢できん。クッソ、あああッお尻もかわええ」
原さんは鷹野の浴衣の裾をぐいと捲りあげて下着越しにチンコを押し付けた。割れ目に当てて、むき出しの腕をがっちりと掴んでゆさっゆさっと体まで揺らしている。何が原さんをそこまで掻き立てるのかわかるようなわからないような。いや俺だって勃起してる。わかっているからこんな気持ちになるのかもしれない。
「もう…ッわかりましたよ。俺も付き合います」
「おう。お前も楽しめ」
つまり、今更逃げることはできなかった。


 


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