※なんか知らんがお嬢がちっさくなっちゃったよ!他の人は年齢変わらないよ!



「うわぁー!えみやがくるー!」
「お嬢、頼むから外に出るなら…」
「やだー!!」

きゃー!と子ども特有の甲高い声と、廊下を走り抜ける足音がする。
おい、と焦ったように追いかける男性の声も聞こえてないかのように少女は玄関に向かっていく、が。

「わっ!」
「ぅお!?」

ぽすん、可愛らしい音を立てて少女の逃走劇は幕を閉じた。
廊下を曲がろうとした瞬間にぶつかった足をぱちくりと見つめ、呆然と固まる少女。
事故にあったもう一人の男性は、一瞬怪我をさせたかと慌てたが、少女の何ともなさそうなリアクションにそっと胸をなでおろした。

「悪ぃな、お嬢。怪我ぁしてねぇか?」
「くー…?」
「ん、痛いとこは?」
「ない」
「なら、良かった」

いまだきょとんと廊下に尻餅をついたままの少女の頭をクーは優しく撫でると、彼女と視線を合わせるようにしゃがみこむ。
そこへ、後を追いかけてきたエミヤがため息をつきながら合流した。

「全く…君はもう少し大人しくできんのかね、お嬢。何も外に行くなと言っているんじゃない。せめてコートぐらいは着ろと…」
「や!えみや、おはなしながいんだもん!」
「なっ」
「はっ、言われてやんの」
「うるさい!」

ぷっくりと可愛らしい頬を膨らませながら抗議する少女と、少女の発言に爆笑する同僚にうっかり頭が痛くなりながら、エミヤは少女にコートを差し出した。
勿論ついでにクーに一発蹴りを入れることも忘れずに。

「お嬢、頼むから外に行くならこれを着てくれ。今日は珍しく雪が降ったから、外は冷える」
「………きたら、こうえんつれてってくれる?」
「あぁ、勿論」
「ほんとう?」
「私が一度でも約束を破ったことがあるかね?」
「………ある?」
「いや、俺に聞くなよ」

自分では判断がつかなかったらしい。
少女はエミヤから視線を外すとクーに確認をとるかのように向き直り、小首を傾げた。
傾けられた小さな頭を、クーはもう一度苦笑を浮かべながら撫でる。
その正面で、そこまで信用されてなかったのかとエミヤは一人眉をひそめ落ち込んだ。

「んー…………ないね」
「なら、いいんじゃねぇの?俺も行くし、ついでに買い物して帰るか」
「おかいもの?!わたし、わたしね!ぷりんたべたい!」
「だってよ、エミヤ」
「…仕方ない。承知した」

廊下に座りっぱなしだった少女を立たせ、軽く身だしなみを整えてやると、エミヤは今度こそ少女にコートを着せた。
ついでに玄関に置きっぱなしになっていた兎の手袋とマフラーを、クーが巻いてやる。
早く、早くと急き立てる少女を宥めながら靴を履き、外に出るとふわりふわりと白い雪が舞っていた。

「すごいすごい!ゆきだぁ!」
「…忘れ雪だな」
「あ?なんだよ、それ」
「3月に入ってから降る雪のことらしい。忘れられた頃に降るから忘れ雪、と…」
「じゃあ、ゆきさんはわすれてほしくないから、ふってるんだね」
「……ほう」
「へぇ、面白いこと言うじゃねぇか。お嬢」

両手をそれぞれクーとエミヤに預け、ぶらさがる様に歩き出した少女は朗らかに笑う。

「だいじょうぶだよ!ゆきさん!こんなにきれーなんだから、みんなわすれないよ!」

空に向けられたその少女の言葉に、従者はそっと笑みを溢した。
今も昔も、こう真っ直ぐなところは何一つ変わっていないのだと。

まるでありがとうとでも言うかのように、ふわりと雪が3人の周りを舞い、消えていった。





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