あなたは向こう側にいる人間なのだと私はそう信じていた。
 私とは似ても似つかないあなた。嫉妬してしまうくらいに私とは違うあなた……。

 私はいつも向こう岸を見つめるようにあなたのことを見てしまっていた。
 時には憎悪の対象として、またある時には灯台のような、路を照らしてくれる明かりとして。

 それなのに。
 私とあなたは違うのに。

 ――どうしてあなたも、こっちにいるの?

 どうして……。

 どうして私に手を伸ばすの。信じられない。
 私はあなたとは違うんだから、あなたは私と違うんだから。
 握手なんてあり得ない。

 隣にいるはずのないあなたは確かに私の隣にいる――私はもちろん。
 もちろん、彼女の手を払わなければならない。
 だって、だってそうでなきゃ。

 対岸にいなきゃおかしいじゃない、おかしいのよ……!
 同じ所にいるなんてあり得ない。
 もし、同じ岸にいるのなら。

「どうしてあなただけ、幸せそうに笑ってるのよ……!!」




対岸2


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