昼寝の時間の後、園児達が楽しそうな声を上げながら遊んでいる姿を見ながら二人は思わず言葉を漏らした。
「えぇと何と言いますか……ねぇ、アカマツさん」
「おう、何かよく分かんねーけど……らしくもなく謝りたくなってくるな」
 無邪気な園児達を前に、二人は複雑な表情を浮かべながらしばらく固まっていた。

 隊長であるアサギリ率いる、ホシノ、タカラベ、アカマツ、マリス、サクラバの六人で構成される便利屋は本日、仕事で保育園を訪れていた。仕事の内容は園児達の面倒を見ることかと思いきやそれは手が空いたらということになっており、主な仕事は園内の様々な場所の清掃だった。専門業者に頼むよりも便利屋に頼む方が費用を抑えられる、園長が便利屋を選んだ理由はそういうことらしい。ちなみに、依頼のあった保育園はそんなに大きくはなかったので今日はアサギリ、アカマツ、サクラバの三人で任務――彼らは仕事のことをそう呼ぶ――にあたっていた。
 きちんと掃除をすることなくビニールを被せて封印されていた園のプールや、職員用の冷蔵庫などの掃除を終えたアサギリ、アカマツ、サクラバの三人は園児達の昼寝の面倒を見た後、少し休憩し、昼寝で体力を回復したパワフルな園児達と遊ぶことになったのだが……。

 アカマツとサクラバは三歳から四歳の子供達と室内で遊んでいた。独楽で遊ぶ子、本を読む子、おままごとをして遊ぶ子と皆それぞれに自分の好きな遊びをしていたが、特にすることを思いつけなかった子達は見慣れぬお兄さん達と遊ぶことを選んでいた。
 そこですることになったのがジャンケン。「じゃーんけーん、ぽん」と言ってグーかチョキかパーを出し勝敗を決めるとてもシンプルな遊びである。そんなに楽しめるのだろうかと疑問を抱きながらも、まあ園児達がやりたいのなら、と二人はジャンケンをしてあげた。
「わーい、おれかったー!」
「お兄ちゃんもういっかいもういっかい」
 ――ジャンケンに勝った時の園児達の反応が予想以上だった。
 勝った時園児達は、この上ない極上の無邪気な笑みを浮かべ大喜びしたのである。
 何回かやればすぐに飽きるだろう、そう思いながら何度かジャンケンをしたのだが何度やっても大袈裟に思えるくらいの反応を園児たちは見せる。
 サクラバが勝った時おどけて、わーい勝った〜と園児に向かって言うとその園児は本当に悔しそうに顔をむくれさせた。そんな表情がかわいらしいと思う以上に。
「僕ら……汚れちゃいましたよね。もうなんか、ごめんなさいって感じですよ」
「俺らにあんな頃があったのか……? ジャンケンに勝っただけなのにあんなに喜ぶなんてよう。信じられねぇ」
「自分の人生これでよかったのかって思えてきますね、悲しいくらいに。あれ、そういえば隊長は?」
 強張ったままの顔を窓の外へと向けると、五歳児達とパワフルに外で遊ぶアサギリの姿が見えた。
「あの人は、無邪気さ加減でいったらあいつらと同じくらいだな」
「今日ばっかりはそんな隊長が羨ましく思えます、ほんのちょっとですけど」
 無邪気な園児達に影響されて複雑な心情になっている二人にはまったく気付かないまま、アサギリは元気よくサッカーボールを蹴り飛ばした。

「ゴオオオオォォォール!!!!」




『む』
無邪気だったあの頃には戻れない



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