夜空に輝く星々は美しい。だがそれ故に人々の心を惑わし、狂わせる。
 それは星の罪なのか、それとも心を揺さぶられてしまった人の罪なのか。

「輝く星ってもんは、きれいなだけじゃあねぇからよぉ。だから質が悪い……なぁ、お嬢さん」
「な、何よ……私は星だったわけじゃないし、星になりたかったわけでもないわ!! 私を勝手に、勝手に星にしたのはあなた達じゃない!」
 君はまるで、まばゆい光を放つ星のようだ。
 そのようなことを娘に囁いた男は一体何人いたことだろう。彼女はその言葉を、男の自分に対する愛情表現としてただ聞いていたが、それは次第に、単なる比喩ではなくなってしまった。
 ――君の美しすぎる光にあてられて、僕はどうにかなってしまいそうだ。
 彼女が愛し、そして彼女を愛した男には決まって同じような傾向があった。
 娘がそれを望んでいないにも関わらず心中しようとしたり、またはある日突然自殺を試みようとするのだ。
 娘はそんな状況に陥る度、何とかして男を振り払い逃げ死なずに済んできたが、ある男は彼女の行動に絶望して死に、またある男は彼女がいなくなったことで死ぬのをやめようと思うも、その時には既に遅く、命を落としてしまった。自殺を試みようとした男に対しては、もちろん彼女はそれを止めようとするが、防ぐことができたのはほとんどない。
 何故かは分からないが、このようなことが続き、娘には悪い噂が纏わりつき始めてしまった。
 そんな彼女を愛した、何番目の男かは分からないが、そのある男は先日自殺をし、そしてそんな息子の死をひどく悲しんだ父親が息子が自殺をしたのはお前のせいだ、責任を取れと、わざわざ殺し屋を雇ってまで娘の命を狙っていたのである。

 娘の目の前に立つ、刀を腰に帯びた男。
 刀はまだ抜いていないが、少しずつ近づいて娘を追い詰める。
「あんた……私なんか斬ったって、面白くも何ともないわよ。むしろ笑われるわ、同じ侍に。小娘なんか斬ってどうするんだ、って」
 震える体を何とか動かし、娘は近づいてくる男との間合いを取った。
「あぁ? そんなこたぁどうでもいいんだよお嬢さん。俺ぁ、あんたを斬れば金をもらえるからそうしようとしているだけでね」
 さぁ、もう鬼ごっこは終わりにしようぜ。
 そう言って男はゆっくりと鞘から刀を抜いた。月の光を受けて、その刃物は鈍い輝きを見せる。

 私、殺され……るの?

 駆け出して逃げるつもりが、足が強張ってうまく動かず、男からいくらも離れていないところで娘は転んでしまった。
 何とか立ち上がろうとするが、それは叶わなかった。
 男がじりじりと近づいてくる。
「あんたもきっと運がないんだなぁ、すぐ死にたがる男ばっかに惚れてよぉ。きれいなのはいい、だがその美しさで人を誑かしちゃ……」
 ――いけねぇんだよなぁ。
 男は彼女との間にあった二三歩の距離を一気に駆け、勢いよく刀を横一文字に振り払った。
 どさり、と娘の体が音を立てて地面に倒れる。
「こんな小娘を斬るたぁ、俺も星の光にあてられたかな」

 星が大地を照らす夜、一つの凶星が地上から消えた。




『わ』
災いを招く凶星



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