きっと、星でも何でもよかったのかもしれない。
ただ、それを胸の内に留めることができないために、星に語りかけるという形になってしまっただけのことなのだ。
草が茂る夜の川辺に寝転がりながら、男は一人そんなことを考えた。
「俺ってさみしー」
自嘲じみた笑みを男はこぼし、夜空に輝く星の一つ一つを見つめてみた。
普段気にしたことはなかったが、一口に星と言ってもいろいろあることに気がつく。
輝き方や色が、違っていた。
あんだけあってどれだけの星が願いを叶えてくれんのかなー。
そんなことをぼんやり思っていると、突如空を横切る一筋の光が現れた。
あっという間に消えてしまったが、その直後また別の光が夜空を横切る。
「へぇ、流れ星か……」
男はゆっくりと起き上がり、もう一度見られないかと期待しながら夜空を注意深く見つめた。
すると、あの刹那の光が再び現れたのが目に映った。
努力なんて生まれてこのかたしたことがないが、今回ばっかりは俺もがんばるからよ――。
男は反射的に目をつぶっていた。
そして、胸から、全身から湧き出る願いを、思いを口から吐き出す。
叫ぶつもりが、突如こみ上げた様々なものに阻まれ、か細いものになってはしまったが。
「この身体を……なんとかしてくれ……!」
そして、男は動きの鈍くなった己の足を拳で思い切り叩いた。
本当に願いを叶えたくて、叶えてほしくて叫んだんじゃない。
お願いすりゃあ叶うなんて、そんな都合よく世の中はできてないだろ?
ただ、捨てたくなかったんだ。
もう駄目だからって、自分の足を。
信じるには脆すぎるからって、残った希望を――捨てたくなかったんだ。
『り』
流星に囁いた、叶わぬ願い