いったい何を、と彼女は目の前にいる少女をただ呆然と見上げた。

 自分と一番歳が近く、そして同性の中で一番自分を慕ってくれている少女。
 その少女が。
 いったい何をしたのか、全身を血にまみれさせ目の前に立っている。
「どう、したの……」
 血が怖ろしいわけではなかったが声が震えた。
 その場に座り込んだまま、僅かに潤いを帯びてきた目を必死に少女の方へ向け答えを待つ。
「別に、血を流せば信頼してもらえるなんて思ってないわ」
「え……?」
「でもね」
 本当なの、と少女はしゃがみこみ彼女をそっと抱きしめる。
「ヒカル、私ずっとあなたの傍にいるよ」
 血を以て示すことが、その誓いが固く、重いものである証拠ではないと思う。
 けれど。
 これは一つの、自分なりの示し方なのだと少女は彼女――ヒカルに信じてもらいたかった。
「約束だよ、ずっと」
 あなたの幸せだけを考え、。あなたの望むものだけを叶える。
 あたしはその為にいるから。
「だからヒカルも」

 それを望んでほしい。
 あたしの傍にいることを。
 そして思ってほしい。
 あたしと一緒にいることが幸せであると。あたしがそう思うように、ヒカルもあたしと生きることが全てであると。


 ――そう、思ってほしかった。




『ち』
血色の誓いの重さ



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