踏みしめた大地は本物だろうか。いや、そもそも本物とはどんなものだっただろう。
 分からない、思い出せない。

 きょろきょろ、きょろきょろ。

 自分がよくよく知っている地を、自分が命を懸けて守っていた大地を、ぎこちなく見回してみるしかなかった。
 まるで異国に辿り着いたみたいに。

 確かに変わった。姿は変わった。変えた。変えられた。


 暗いあの場所から出て、確かめたいものがあった。叫びたい言葉があった。
 それは、喜びに満ちた言葉だったか、悲しみにくれた言葉だったか。
 今ではもう分からない。

 私達は、まるで言葉を忘れてしまったかのように、何も言えないでいる。
 涙も流さずに。


 この光は何だろう。


 眩しい光。
 そうか、あれは太陽の光なのか。

 手を目元に遣って考える。

 この光は何だろう。この温かさは何だろう。
 当たるはずのなかった光が、何故私達に降り注ぐのだろう。

 何故、何故なのか。

 一歩踏み出し、再び辺りを見回す。
 避けることのできない現実は、既に広がっていた。もうずっと前から。

 そこで私達はようやく泣き崩れる。



 焦土という己の過ちに、解放という絶望に、震えながら。




『ほ』
解かれた鎖とは裏腹に、囚われた心



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