感情がすっかり鈍磨してしまった自分を厭っていたのに、実はそうでもなかったのだという事実を身をもって知っても、単純に喜ぶということはできなかった。
 喜びは、確かにあったのだ。あったのだが、己の心中は複雑で喜び以上に胸を占めるものがあるようにも、またないようにも思えた。

 複雑だった。



 人に蔑まれた悲しみで己の感情の揺れを知るなど――



---------------------------



「構いません。私にとって真実であれば、それでいいのです。」



---------------------------



そう、なのかもしれない。


俺は

私は


満たされないことで、満たされている。



---------------------------



「私は一介の獣に過ぎませんから」



---------------------------



「あんたは神様さえも方便にしちまうつもりなんですか」



---------------------------



「これ、が、親不孝者の末路です……」


 ――でも、それにしては。


「でも、それにしては……素晴らしい最期を、頂きました」



---------------------------



「ええ、怨んでます」


 そう言った彼の目が、鋭く私を貫く。


「だからここに居るんです」



---------------------------



「私は飼い犬ですから」


 彼は肩越しに振り返る。


「主人の手に噛みつくのが本分、でしょう?」


 いつものように微笑みながらそう言った彼のことが……そう、怖かったけれど、それ以上に何か惹かれるものを感じてしまった僕は。

 どこかおかしいのだろうか。



---------------------------



「悪いな。俺ァ、気が利く女より鼻の利く女の方が趣味でね」



---------------------------



「さあ君、喜びたまえ。新たな悪意の誕生だ」



---------------------------




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -