感情がすっかり鈍磨してしまった自分を厭っていたのに、実はそうでもなかったのだという事実を身をもって知っても、単純に喜ぶということはできなかった。
喜びは、確かにあったのだ。あったのだが、己の心中は複雑で喜び以上に胸を占めるものがあるようにも、またないようにも思えた。
複雑だった。
人に蔑まれた悲しみで己の感情の揺れを知るなど――
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「構いません。私にとって真実であれば、それでいいのです。」
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そう、なのかもしれない。
俺は
私は
満たされないことで、満たされている。
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「私は一介の獣に過ぎませんから」
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「あんたは神様さえも方便にしちまうつもりなんですか」
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「これ、が、親不孝者の末路です……」
――でも、それにしては。
「でも、それにしては……素晴らしい最期を、頂きました」
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「ええ、怨んでます」
そう言った彼の目が、鋭く私を貫く。
「だからここに居るんです」
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「私は飼い犬ですから」
彼は肩越しに振り返る。
「主人の手に噛みつくのが本分、でしょう?」
いつものように微笑みながらそう言った彼のことが……そう、怖かったけれど、それ以上に何か惹かれるものを感じてしまった僕は。
どこかおかしいのだろうか。
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「悪いな。俺ァ、気が利く女より鼻の利く女の方が趣味でね」
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「さあ君、喜びたまえ。新たな悪意の誕生だ」
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