あぁ、これは嘆くべきことだ。私はこれ程にまで自分の家族を卑しいと思ったことはない。

 普段は他人を馬鹿だ阿呆だと罵り、まるで自分達は特別優れている存在であるような言い方をしておきながら、困った時はその馬鹿だ阿呆だに頭を下げ、それらを頼る姿は、まったく見ていられない。

 きっと彼らには馬鹿や阿呆の意味が、本当はよく解っていないのだ。解っているのならあのような行動はできまい。本当の馬鹿や阿呆は彼らなのに、それにはまったく気がつけない。
 あぁ、本当に卑しい。
 その性根の汚さには呆れるほどである。これだから下手に知識を蓄えている奴は質が悪い。賢いのではなくただただ、醜い。

 こうして嘆く私を見て、恐らく彼らは首を傾げるだけなのだろう。自分達が私にどのように映っているのか考えたこともないのだ。

 私はそっと家を出た。出ずにはいられない。あんな卑しいモノとは一緒にいられないからだ。思い残すことがあるどころか、何とも気分が清々しい。
 いつもは怖ろしく感じる夜道も、今は怖ろしくとも何ともない。妙に高揚したような気分を感じながら、私は歩いている。

 ふと、その暗闇の中で何かが動いたような気がした。辺り闇に包まれているにも関わらず、何かが動いたように見えたのだ。

 その闇の中動きをみせた何かのことを考えていると、突然何かが足に絡みついてきた。べちゃべちゃと汚らしい音も聞こえる。
 足に、と思えば瞬く間に下の方から上の方へと、その絡みついてくるものは上っていき、私は何やらよく解らないものにすっぽり包み込まれてしまった。

 どうやら、後をつけられていたらしい。 いや、私自身が追いかけてきたのか。


 私もまた、卑しい人間だったのだ。




追包


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