わたしの見る夢は、妙なものが多い。いや、夢とは元々そういったものなのだろう。
 現実的なようで実はちっとも現実味が無く、しかしただの空想の割にはやたら現実味が有る。夢だとはっきりと分かるのに、本当のことのように思えてきてしまう。嘘が真のように見えてしまう。
 夢とは不思議な一時、そして現実と虚構が入り混じる場所だ。
 最近見る夢は、子供が出てくる夢だった。子供といっても見ず知らずの子供ではない。
 ――自分の子供が出てくる夢なのだ。わたしには子供などいないというのに。
 だが、夢に出てくるその幼子が自分の子供であるということが何故か分かる、知っている。

 子供はいつもじいとわたしを見つめている。不思議な目だった。特にこれといった感情も込められていないその視線。硝子玉のように見えなくもない目を持つわたしの子供。いや、だからといって人形だとは思わないが。
 あの子は、人間だ。

 わたしは徐に手を伸ばし子供の頭を撫でようとするが、わたしの手が触れる前に子供はいつもばっと走り出してしまう。
 それが拒絶を表したものなのかどうなのか、そこのところはよく分からない。ただ、わたしは駆けていく子供の後ろ姿を決して追おうとしなかった。
 いつも、何回も。
 走り去っていった子供の視線と同じく、特にこれといった感情も込めていない視線を送り続けているだけ。
 ただ、子供の頭まであとほんの少しというところで届かないというのが、何故かとても寂しく感じた。その柔らかそうな髪に届くこともないわたしの手、子供の頭を撫でることができないわたしの手。それが寂しかった。

 何度繰り返し夢を見ても、何も変わることはなかった。
 相変わらず子供は駆け出していってしまうし、相変わらずわたしはあの子の頭を撫でてやることができない。
 抱きしめようとすればいいのだろうかとも考えた。だがそれは「違う」ように思えて、行動に移すことはなかった。
 わたしは撫でてやりたいのだ。あの子供を、わたしの子を。
 あの子供はそれを受けなければならないと思う、受ける権利がある、あの子には。
 わたし自身は経験のないことだけれど。




夢の中の子供


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