私の前には、天秤が存在している。
重々しくも軽々しくもない天秤だ。そこにあるのがさも当然かのように、それは私の前に存在している。
その天秤は、傾く。
天秤なのだから当たり前かもしれない。だが、私はその傾きが嫌いだ。不安になる。不快で仕方がない。
しばらくすると傾きは無くなり、以前のような水平に戻る。だがそれは長く続かない。
また、その天秤は傾くのだ。しかも前回とは反対側が傾く。
そして、しばらくすると戻る。
それが繰り返された。
その天秤は必ず、必ず左右交互に傾き、常に私を脅かした。
その傾きが、嫌だ。
何故、そんなに傾く?
水平だっていいだろうに。天秤だからといって傾くだけが全てではないだろう?
私の前には天秤が存在している。重々しくも軽々しくもない。
だが、私を確実に不安にさせる。
天秤