地平線が少しずつ色を帯びていく様は何度見ても飽きることがなかった。
自分以外に人影がまったく見られない早朝の海岸は波の音だけが静かに響いている。
その音がとても心地いい。
砂浜にどっかりと座り込んで、まるでこの世界には自分一人しか存在しないかのような感覚を少しだけ楽しんでみた。
そう、少しだけ。
丸っきりそう思い込めるほど素直ではなく、だからといってその願望を胸の内から捨てきれずにいた。
だから少しだけ、そんなしょうもない自分の望みに浸ってみたのだった。
いつの間にか、太陽が半分ほど地平線から顔を出している。
日の出というのは出てくるまではとても長く感じるものだが、少しでも出ると後は思いの外早い。
あっという間に昇って、その力に満ちた光で大地を照らしだすのだ。
白波をぼんやりと眺めているうちに、本当にあっという間に陽が昇ってしまった。
――やっぱり、いいもんだな。
そう呟いて、大きな欠伸をしながら伸びをした。
またこうやって、たまには日の出を拝んでから一日を始めてみよう。
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