あまり水を足さなかったせいか、気がつけば赤色の絵の具が乾いてしまっていた。
また水を垂らせば使えるだろうと、筆に水を含ませ絵の具に落としてみたが、そううまい具合にはいかなかった。
だからといって、新たに絵の具を出す気にはなれない。
自分が丁度、使いたいと思う量がパレットにへばり付いているのだ。
大量に赤色を使いたいわけでもないし、なんとかしてその乾いてしまった絵の具を使えるようにできないだろうか。
なかなか使える状態に戻ってはくれないので、少々苛つき、こびりついた絵の具をパレットから洗い落とすかのように、筆で強めに擦りながらかき混ぜた。
すると散り散りになって、乾いた絵の具がパレットから剥がれる。
厚みをもった水滴の中を、その破片が鮮やかに舞った。
まるで花弁のように。
「……きれい」
思わず呟いてしまった。
「え、何?」
私の呟きをうまく聞き取れなかった友人が、何事かと訊いてくる。
私は友人の問いかけに気づくこともなく、しばらく見入ってしまっていた。
薔薇の花弁のような絵の具の欠片が、水中を優雅に舞う、その姿に。
舞う